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第1回 Repatriation(リパトリエーション)

  • masatohino
  • 2020年2月29日
  • 読了時間: 3分

第1回 Repatriation(リパトリエーション)

先日NHKのポッドキャストを聞いていたら、拉致被害者の有本恵子さんのお母様が亡くなったニュースが報道されていました。


Japan's Prime Minister Shinzo Abe says it is truly regrettable that Japan was unable to repatriate abductee Keiko Arimoto from North Korea before her mother died.



repatriateは本国に送還させる、帰国させるという意味です。ちなみに帰国済みの元拉致被害者は

repatriated abducteeと表現されています。


ところでこのrepatriate、repatriationという単語は、日常会話ではあまりお目にかかることはないのですが、金融業界ではわりとよく使われる言葉です。金融では「リパトリ」と省略して使われており、海外事業で得た稼ぎなどの資金を本国に「送金・還流」すること表します。たとえば、巨額の米国債投資を行っている日本の生命保険会社が米国債を売却すると、売却によって手にする大量のドルを円に換える必要が生じます。こうした文脈では資産売却がドル売り・円買いが進む要因となるため


Whenever the yen rises, people think it is due to repatriation


などという表現が見られます。


ところで最近もう1つ「リパトリ」が入った言葉がよく聞かれるようになりました。これが「リパトリ税」で、2017年にトランプ大統領が行った The Tax Cuts and Jobs Act of 2017(2017年税制改革法)で導入されました。


先ほどリパトリとは、海外事業で得た稼ぎなどを本国に「送金・還流」することと書きましたが、米国ではこれまで法人に対する課税に関して全世界所得課税が採用されていました。これは、法人が海外子会社を保有している場合、所得源泉地国での課税に加えて、その利益を米国に送金(配当)する際にも米国で税金が課せられることを意味します。つまり企業にとっては二重課税になるわけです。それを回避するために、米国の大企業が税率の低い国に子会社を設立し、そこで得た利益を本国に戻さず(配当せず)現地に滞留させていました。


トランプ政権は、この3兆ドルを超えると言われる滞留資金を米国に戻すことで、国内の設備投資を活発化させ雇用を増やすことを目的としてリパトリ税を導入しました。


リパトリ税については、それまで計上していた繰延税金資産や繰延税金負債の再計算が必要になったりと会計上複雑な要因をもたらしています。ご興味のある方はアップルなど米大手企業のForm10-Kを見ていただくとリパトリ税関連する開示事項がたくさん出てきます。


ところで、今回の税制改革でトランプ大統領が狙った国内での事業拡大や技術革新などの設備投資資金に回っているかというと、実はそうではありません。海外から還流した資金はどこに行っているのかと言えば、企業の自社株買い原資になっているのです(もちろん設備投資資金がゼロというわけではありませんが)。こうした自社株買いが昨今の米国株式相場を支えているという構図です。


やっぱりcashはrepatriate (to the original company)する定めなのかもしれません。


2020年2月29日

 
 

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