2022年4月
- masatohino
- 2022年5月1日
- 読了時間: 3分
2022年4月

1.NOISE【ノイズ】ダニエル・カーネマン、オリヴィエ・シボニ―、キャス・R・サンスティーン 著
村井章子 訳 早川書房
ノーベル経済学賞受賞者のダニエル・カーネマンによる著。人の判断結果を著しくゆがめるエラーを、バイアスとノイズに分け、特にノイズに焦点を当てて論じています。ノイズは著しく不公平で、多くのコストを生みますが、そうしたノイズを分析し、論じ、さらにノイズを削減するための施策まで盛り込んだ極めて実践的な書です。不確実な現実においてアルゴリズムは完全ではないものの、AIのようなものはコスト見合いと言う点でも一定の効果を発揮すると論じています。
先日、都内の有名私立大学病院に行った知人の大腸にポリープが見つかりました。内視鏡で見たところ良性なので、手術は急がないと言われたそうです。その後、他の所見で都内の有名国立病院にかかったところ、そこの病院のA医師はこの大腸ポリープは「面構え」は良いが取りにくいポリープなので内視鏡ではなく普通の手術にしましょうと言い、B医師は「良かったですね。ガンですよ。早く見つかったので早く手術しましょうね」と言ったそうです。
プロフェッショナルの診断にはノイズが多い・・・・と、この本にも書いてありましたが、大病院の医師3人の間でも1人の患者に対してこれだけノイズが発生するというのは「当たり前」ながら「恐ろしい」ですね。ちなみに医者でいうと、同じ医師でも朝と夜とで診断は違うし、今日と1カ月後でも診断は違う・・・。というノイズが世の中に横行しているわけです。ノイズの原因と解消法を提示することで、行動経済学が世の中の不平等解消において果たす役割は大きいのではないかと思います。
下巻の最後に「まとめと結論」としてサマリーがあるので、忙しい方はそこだけ読んでも可。村井章子さんの美しい日本語とともにぜひ。
★★★★★

2.理不尽な進化―遺伝子と運のあいだ― 吉川浩満 著 ちくま文庫
話は進化論から始まります。これまでに地球上に誕生した生物のほぼ全ての種が絶滅する、という衝撃的な話から出発するわけですが、この著者はとても文章がうまく、ところどころに「くすり」と笑ってしまうツボがちりばめられています。
「・・・なんとも驚異的な生存率(の低さ)ではないか。気持ちいいほどの皆殺しである。母なる大地などと言うけれども、それは一大殺戮ショーの舞台でもあるということだ・・・」(P35)なんて言われるとサクサク読み進めてしまうわけです。そして生物が絶滅するか否かは「運」だ、と話は進んでいきます。
しかし、この生物が生き延びるかどうかは運というのがこの本の本質ではなく、第二章以降ディープな思想の世界に入っていきます。頭の悪い私は途中でかなり溺れましたが、終章でもう一回全体をまとめてくれます。ということで、この本全体を論じる力量は私にはありませんので、ご興味のある方はぜひ手に取ってみてください。
しかし・・・昨今のウクライナ難民に対する各国の手厚い支援、この日本でさえもすでにウクライナから避難民を受け入れている事実。しかしシリアも、ロヒンギャも、日本政府が何か積極的に手を講じたという記憶はありません。ウクライナ支援に異を唱えるつもりはありません。ただ、この対応の差は時期、場所、国家間の関係等さまざまな要素がもたらした「運」なのだろうなぁ、と考える今日この頃。世の中は実に理不尽。
★★★★★


