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2025年6月

  • masatohino
  • 2025年7月1日
  • 読了時間: 4分

2025年6月


「会社と株主の世界史」
「会社と株主の世界史」

1.「会社と株主の世界史」中島茂 著 日本経済新聞出版


 企業法務一筋45年の著者が送る、会社法や株主の歴史の本。超ニッチな分野を扱った本ですが、実に面白かった。私、三菱UFJフィナンシャル・グループの株主なのですが、今年の株主提案は本当にひどかった。「フィナンシャル・ホールディングス」の間の「・」を取れだの、青汁王子やホリエモンにNHK党の立花氏を社外取にしろだの、まあひどい。なぜこんなレベルの株主提案を、招集通知として何万人の株主の手元に書面で届けなければいけないのか実に不可解だったのですが、この本を読んですっきり。会社法の抜け穴というか、欠点ですね。

 そもそも株式会社は、事業を行うために国王から特権が与えられ、それに基づいて名士・貴族たちが出資したところに起源があります。つまり、持てる者である貴族や名士たちが、社会の役に立ちたいと思って会社に出資をして事業を行った「ノブリス・オブリージュ」の精神がそもそも根付いた概念なのです。だから、東インド会社の出資者たちは無限責任を負っていました。高い社会的地位にある人は義務を負うべきだからです。したがって、会社はその起源から、社会に対して責任を負うべきものなのです。会社は株主のモノ=株主の方だけを向いていれば良いという20年ほど前の風潮から、パーパス経営やステークホルダー経営といった社会的義務にフォーカスを当てる流れへと変わってきました。しかし、またここ数年、反ESGの波やトランプ政権の復活により、その潮目が変わりつつあるようです。

 これからの株式会社、資本主義を考えるうえでも歴史を知っておくのは大事だと実感した一冊。企業経営、株式市場に携わる人は必読。

★★★★★



「イシューからはじめよ」
「イシューからはじめよ」

2. 「イシューからはじめよ」 安宅和人 著 英治出版


 今年コンサル会社に入社した長女が、入社前課題図書ということで読んでいた本を拝借。本屋に山積みになっているベストセラーだということは知っていましたが、なかなかタイトルに「びびっ」とこなかったので回避しておりました。

 読んだ結果、やっぱりびびっと来ない。何がイシュー(問題の中心)なのか見極めろ、というテーマはよくわかるのですが、具体的にたとえばセミナーの資料を作ろうとしている場合など、「何を」「どう」変えていないから「犬の道(無意味に時間ばかり費やすことを言うらしい)」を歩んでいるのかなかなか気づかない。何度も読み返すよりも、おそらく実践をしながら考える方が良いのかもしれません。

 ひとつ引っかかったセンテンスは、「どんな話をする際も、受け手は専門知識はもっていないが、基本的な考えや前提、あるいはイシューの共有から始め、最終的な結論とその意味するところを伝える、つまりは『的確な伝え方』をすれば必ず理解してくれる存在として信頼する。『賢いが無知』というのが基本とする受け手の想定だ」(P214)というもの。以前にこの朝読書でも取り上げましたが、今井むつみ氏は「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか」という本の中で、スキーマの違いを指摘しています。この安宅氏の前言は、相手は自分と同程度の知性を持っており、そのコンテクスト内で知らない知識を埋めてあげれば理解し合える、伝わるという前提としているようにも思えます。つまり、今井氏の言うところのスキーマをそもそも共有していることが前提にあるのではないでしょうか。

 賢い人たちのコミュニティ内では『賢いが無知』は通るのでしょうが、もっと大きな有象無象を対象とした場合にはどうなるのでしょうか?どこぞの新政党は候補者の8割が東大卒。間違いなく日本の知性の塊なんでしょう。そういう政党内ではきっと理解の共有がスムーズに進むのだろうなぁなどと思いながら、コンサルの中の人たちも、基本はスキーマが同じだからこういう発言が出るのだと思った次第。 

ベストセラーと言うことは、これに共感した集合知があるということなので、自分の能力の低さを認めるしかない。ということで★3つ。

★★★☆☆


 
 
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