2026年6月の本
- 7月18日
- 読了時間: 3分

1.「上昇 アメリカは再び団結できるのか」 ロバード・D・パットナム 著 柴内康文 訳 創元社
近年、分断が進み国力が落ちているように見えるアメリカ。建国250年の節目に、アメリカという国が制度や政府、文化やマインドセットがどのように変化してきたかを150年にわたって紐解く本書。
アメリカは1880年~金ぴか時代に大きく経済的格差が拡大していった。だが、その後、1960年代に向けて収入・所得の格差が著しく縮小し、「大収束(グレートモデレーション)」の時代に突入する。その背景には、国内の制度的・社会的改革があった。つまり、連邦税制(累進課税所得の創設と発展)、反トラスト法制定、金融規制のような新たな制度は、公立高校での教育の推進や労働組合の勃興、教会を中心とした帰属意識の高まりによって大きく花開いたというわけである。人々が格差の拡大や不平等な社会に憤りを感じ、それを社会的な行動に変えていった成果だったのだ。
だが、その後、アメリカはこうした同調主義から個人主義へと転換していく。1970年代になると、このような社会的イノベーションと制度改革が後退していき、「我々は皆ともにある」という考え方から、リバタリアン(重至上主義的)に転換していった。その一因に、裕福で保守的なビジネスエリートの共和党がより右傾化したことや、アメリカンドリームが、男性・女性がそれぞれ生来の能力を十全に発揮し、生まれ落ちた偶然の環境に左右されず認められることという「社会全体の幸福」を目指す考え方から、自家所有のような個人的な物質的成功へ変わったことがあるようだ。
このように、アメリカは過去150年の間に大きなレジームチェンジを2度経験している。1960年代までに主流となっていった進歩主義は、まず道徳的な目覚めと怒りが芽生え、それが市民行動へと転化していった。それが、1970年代に個人主義中心の分断的なアメリカに変化していったのである。
アメリカの分断が強調されて久しい。だが、今の分断だけを捉えてもその背景はわからない。突然トランプが出てきたわけではないのである。ずっと前から人々の気持ちの中で分断は進んでいて、それが制度や国家、システムにつながり、たまたまトランプが登場しただけなのだ。
アメリカが再び協調を中心とした国家になるかどうかは、親世代とはまったく違うアメリカに直面している若者のメンタリティが左右する。SNSやAIが社会の中心に躍り出る世の中であっても、人間の気持ちが国家制度を作る基盤であることは変わらない。
実はこの本、原書の初版は2020年、実に6年前である。膨大かつ緻密な歴史分析には頭が下がる。これぞまさしく歴史を学ぶ意義か。
★★★★★

2. 「会計指標の比較図鑑」矢部謙介 著 日本実業出版社
ここ数年、J-FLEC(金融経済教育推進機構)で金融リタラシー講師をしたり、日本CFA協会のボランティアなどを通じて、大学生と話すことが増えている。そうするとお金や金融に必ずしも精通していない若者に、いかにわかりやすく会計の話をするかことも大事になってくる。そんなわけで、久しぶりに「会計・投資の基本のき」を説明するためのヒントとして借りてみた。
本書では、さまざまな基本的な会計・投資指標が、ピアグループと比較しながら説明されていて非常にわかりやすい。この手の手法は目新しいわけではなく、過去のいくつものの書籍や記事で試みられているが、それでも新たな書籍が出版されるのは、決算数字や企業が生ものだからなのだとつくづく思う。
昨日、SSBJ(サステナビリティ基準委員会)の解説セミナーに行ってきた。正直を言えば、サステナビリティになると会計ほど企業間の比較として指標を使うことは有効ではなくなる。世の中がますます複雑になっていく中で、まずは基礎固めとして会計知識をつけておいた方が良いよ、と学生さんにお話しする今日この頃である。
ということで、基本のきの書です。
★★★☆☆



