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第36 回 Mint (鋳造する、作り出す、大量の・・・・ほか)
第36回 Mint (鋳造する、大量の・・・・ほか) 先週トランプ前大統領の狙撃事件があり、民主党大会では冒頭いつになく穏やかなトランプ氏が逆に不穏に見えました。さて、本日の言葉はその関連記事の中で目にしたMintです。 Mintは金融関連では「鋳造する」という言葉でおなじみの用語です。ちなみに日本の造幣局は「Japan Mint」と言います。同局のHPを見るとAbout Mint, Know Mint, Enjoy Mintとなんだかサウンド的に軽やかなヘッドラインが並んでいますのでご興味のある方はこちらをどうぞ。 https://www.mint.go.jp/eng さて、本来の「鋳造する」という意味以外にも「作り出す」(似てはいますが・・・)という意味でも使われます。 こちらはアルケゴス・キャピタルというヘッジファンド創業者のビル・ファン被告が詐欺行為で有罪判決を受けたときの記事です。 Bill Hwang, the founder of Archegos Capital Management, was convicted Wednesd
2024年7月21日


2024年6月
2024年6月 「米国の投資家が評価する『良い会社』の条件 クオリティ投資の思考法」 1.「米国の投資家が評価する『良い会社』の条件 クオリティ投資の思考法」森憲治 著 日本実業出版社 タイトルに惹かれて書店で買いました。内容としては至極まっとう、どちらかといえば投資初心者向けのファンダメンタルズ投資に関する書籍です。株式投資について、実務的な数値やテクニカルなどではなく、景気の変動はどういった点で企業に影響を与えるか、どういう収益の質を投資家は評価するのか、といった定性的な説明に重点を置いています。 資産運用立国を目指すなら長期投資の目線で、良い企業を見極める能力を国民が養う必要があります。10年、20年といったかなり長期の投資期間を前提にするのであれば、1年後の利益見通しを前提としたPERなどでバリュエーションを測ってもあまり意味がありません。自分で「良い」と思った企業を見つけた際には、新NISAの成長枠投資などを活用して少額から長期投資をしてみるのも良いかもしれません。 内容はさほど難しくありませんし、数字(数式)もほとんどありませ
2024年7月1日


2024年4月/5月
2024年4月/5月 「日本国債入門」 1.「日本国債入門」 服部孝洋 著 一般社団法人金融財政事情研究所 その昔、新入社員で証券会社に入った頃。配属先の先輩からもらった本がありました。その本は、大和証券の債券部門に配属されると新人がもらえるらしいのですが、なぜかどこの証券会社の人もそれを持っていました。確か「債券の基礎知識」とかいうタイトルの黒い本でした。 その本の何がすごいかと言えば、債券市場の概要だけでなく、実務に必要な基礎知識が全部網羅されていたことです。トレーダーやお客様とのやり取りに必要なBPV(ベーシス・ポイント・バリュー)の意味やチーペストの計算方法から、決済の実務にいたるまで、およそ日本国債に必要な知識はページをめくれば探すことができました。それも数年に1度は改定されるのです。 それから云十年経って、国債の売買をすることもお客様への取次ぎをすることもない今、この手の本を必要とするわけではありません。ですが、この「日本国債入門」を書店で手に取った時は、もう手元にない大和証券のかの本の代わりになる、とちょっと嬉しくなりました。
2024年6月1日


2024年3月
2024年3月 「イングランド銀行公認 経済がよくわかる10章」 1.「イングランド銀行公認 経済がよくわかる10章」 イングランド銀行 著 村井章子 訳 すばる舎 この本、実に面白い!大学時代の経済の教科書といえば、マグロ―ヒルのマクロ経済学だとかあの辺が定番でしたが、ちっとも面白くない。需要と供給の曲線とか、そういうことじゃなく、もっと面白い経済学の教科書はないのかと思ったものです。この本はその100歩先を行く面白さ。数式やグラフはありませんが、経済の本質を突いた良本です。イングランド銀行が国民に向けて書いた経済の入門書という位置づけだそうですが、経済を身近なものに感じてもらうためにたくさんの事例を用いていて親近感の湧き方が半端ない。序章を含めて全10章を1日1章ずつ(約20分)、ほんの2週間ほどで一気読みしてしまいました。 特に第6章のインフレに関する記述と、第10章でふれている量的緩和に関する説明は秀逸。渡辺努先生などもこの辺の説明には長けていますが、これほどわかりやすく金融政策を説明した本はほかにないと思います。なぜ「期待」インフレ
2024年4月1日
第35 回 Square (手仕舞う 他)
第35回 Square (手仕舞う 他) 年初から急ピッチで日本株式が上昇していますね。 決算期末でバタバタしていたこともあり、気が付けば桜の季節となりいささか焦っております。 さて、本日の言葉はSquareです。真っ先に思い浮かぶのは「四角」とか「平方メートル(suare meter)」ですが、それ以外にもさまざまな場面で遭遇します。特に金融用語という形で使われていないことも多いのですが、ニュースやレポートなどでも時々出てくるのでご紹介しておきます。 まずは最も一般的な使い方であろうと思われる「~の意見に同意(一致)する」。 以下の1文は、CFOが最近の経済指標と実態経済との乖離にどう折り合いをつけるかという記事からの一説です。 Chief financial officers are looking to square a strong U.S. economy with consumer sentiment showing signs of strain—and trying to determine whether it signals
2024年3月11日


2024年2月
2024年2月 「世にもあいまいなことばの秘密」 1.「世にもあいまいなことばの秘密」 川添愛 著 ちくまプリマ―新書 言語学者の川添愛さんの新著。「言語学バーリトゥード」以来すっかり川添節とその本の装丁に魅了されておりますが、今回も「キノコ先生」の帯といいインパクト抜群です。本著は言葉って曖昧だよね、というテーマに進められていくのですが、「こういうのあるある」と頷くことばかりでとにかく楽しい。我が家でも年中「今日夕ご飯いる?」「大丈夫」「おかわりは?」「いいよ」という言葉が行き交い「いったいどっちなの?」という会話が起こっています(食べることばかりですが・・・・・・)。 川添さんはこういう曖昧さは日本語に限ったことではないと言いますが、日本語ではゼロ代名詞(表面的に表れない主語や目的語)が多用されていたりすることも影響しているようです。また人間は、人の言葉を理解する時に文脈に頼る傾向にあることも曖昧さに関係しているそうです。そう考えると、日本語は欧米言語よりも文脈に依存する度合いが高いので、私が生業とする翻訳においても曖昧さというものに気を
2024年3月1日


2024年1月
2024年1月 「やっぱり英語をやりたい!」 1.「やっぱり英語をやりたい!」 鳥飼玖美子 著 幻冬舎新刊 SNSで新刊のアナウンスを目にしてポチった一冊。「やっぱり英語をやりたい!」というタイトルは、日本人の英語コンプレックスをよく表している気がします。そもそもこれだけの長い時間英語教育というものを受けているのにも関わらず、また、受験英語であれほど難解な文法・読解問題をこなしてきているにもかかわらず、英語をもう一回やらなければ、という気にさせられるのが諸悪の根源です。私の英語学習ブームには、文法⇒リスニング⇒英会話⇒読解⇒ライティングなどそのときどきで波はあるのですが、英語の勉強を常に続けてきた身としてやはり気になるタイトルです。 しかしながら、内容としてはNHK「太田光のつぶやき英語」で出会ったいろいろな人の英語学習法を紹介や、編集者からの質問に対する回答で進んでいきます。もちろんテレビを観ていない人には良いのかもしれませんが、だったらテレビを観た方が実践的なような気もしないでもない。さらにQ&Aの内容を見ると、「海外の方と話すことに慣れ
2024年2月1日


2023年12月
2023年12月 「経営戦略としての人的資本開示」 1.「経営戦略としての人的資本開示」 一般社団法人HRテクノロジーコンソーシアム(編) 日本能率協会マネジメントセンター 2023年3月期から有報における人的資本開示が始まりました。人的資本開示の国際規格「ISO30414」では1.ワークフォース可能性、2.ダイバーシティ、3.リーダーシップ、4.後継者計画、5.採用・移動・離職、6.スキル・ケイパビリティ、7.コスト、8.生産性、9. 組織文化、10.組織の健康・安全・ウェルビーイング、11. コンプライアンス・倫理 という11の人的資本領域において58のメトリックスを示しています(P56)。 IRという視点から見ると、人的資本開示は気候変動関連の開示よりはるかに重要な意味があると思います。気候変動の場合、製造業であれば自社に対するインパクト以外に、自社が与えるインパクト(の軽減)というダブルマテリアリティという側面において、自社の取り組みが企業価値の向上につながるケースは多いですが、中小企業やサービス業の場合、能動的に気候変動に対して対策
2024年1月1日


2023年11月
2023年11月 「刺さる英語 マーケティング翻訳術」 1.「刺さる英語 マーケティング翻訳術」 岩木 貴子 著 三修社 出版記念セミナーのようなものに申し込んでいたはずなのに、忙しさに負けて参加しなかったのですが、人づてに「この本良い!」と紹介をうけ、遅まきながら購入。日英翻訳をする際は常に遠田和子さんの言う「等価であるかどうか」という点を意識しているわけですが、ことマーケティング要素の強い文章になると、どこまでが等価なのかわからなくなってきます。この本はマーケティング翻訳において心がけるべきことをまとめつつ、実践的な演習も網羅しているのでとても参考になりました。 マーケティングというのは基本的に何かを「売る」ための文章。これは私の対応分野であるIRにおいても同じで、企業の取り組みをアピールし、企業を投資家に「売る」ことは大事なポイントです。特に、謙虚な日本人の書いた統合報告書や中計などをいかに投資家にアピールし、企業を買ってもらえるような書き方をするか、という視点を持つ必要があります。 パートⅢの実践編がこの本の中核ですが、日本語と訳例
2023年12月1日


2023年10月
2023年10月 「投資家をファンに変える株主ケア」 1.「投資家をファンに変える株主ケア」デービッド・スノーディ 著 アスコム IRコンサルタントとして、ある企業の方に個人投資家を増やすよう進言したことがあります。会社は有名な機関投資家、その裏にいるアセットオーナーに株を持ってもらうのを好みますが、個人投資家が保有しない株は流動性も乏しく、一方向に振れやすいことから個人投資家のファンを増やす施策を打つべきだと述べました。結果的にその提案には賛同を得られなかったわけですが、この本は株主ケアをすることによるボラティリティの低下効果を訴えており、まさに私が提案した内容そのものでした。 ROEの高い企業の方がボラティリティが高いという分析結果にはなるほどと思いましたが、考えて見れば、ROEが高く優良と言われる銘柄はインデックス投資家が必ず保有するし、業績の有無と関係なく株価が変動するケースもあるので納得できます。ファイナンスではボラティリティ=リスクですので、リスクを抑えることによりすべての投資家の利益になるというロジックは理に適っています。...
2023年11月1日


2023年9月
2023年9月 「言語の本質」 1.「言語の本質」今井むつみ 秋田喜美 著 中公新書 認知科学者、言語心理学者の2人がタッグを組んだ書籍。子どもが使うオノマトペの研究から始まり、最終的にアブダクション推論にたどり着きます。日頃言語を相手に仕事をしているわりには、言葉に対する洞察も愛情も薄い私ではありますが、本書はとても興味深く拝読いたしました。オノマトペがアイコン(( ´艸`)←こういうものやプレゼンなどに良く使われるもの)と同じように、表す対象と表されるものの間に類似性(アイコン性)があること、また、濁音や発音、口の開け方などによって、オノマトペがそのアイコン性をさらに高めている(ダンダンのほうがタンタンよりも激しさを表す等)という考察は実に面白いです。 さらに英語にオノマトペが少ない理由として、日本語は副詞や形容詞で動作を表すことが多い( とぼとぼ 歩く)が、英語にはその行為自体を表す動詞が多い(plod)と書かれており、だからこそ英語の場合は必死に辞書を引いてそれにぴったり合う「単語」を見つける努力が必要なのだなぁとつくづく思いました。
2023年10月1日


2023年7月/8月
2023年7/8月 「一気読み世界史」 1.「一気読み世界史」出口治明 著 日経BP社 いつも元気な立命館APUの出口学長による7時間で世界史を学ぶための本。「はじめに」の中に「『人間って、こういう大きい流れの中で生きてきたんやな』ということをわかっていただければ、すごくありがたいと思います」とあります。今はウクライナで戦争が起き、トルコやモロッコには地震災害が発生し、と大事件が多発していますが、500年後の教科書には「ウクライナとロシアの小競り合いが起き、各地で地震や背自然災害が発生した」の1行で終わるのかもしれません。 そういう意味ではざざーーっと人類5000年の歴史を斜め読みするとう発想自体はとても面白いのですが、なにせ地域が飛びまくるので、読んでいてもなかなか頭の中で点と点が結びつかない。高校時代に世界史の勉強をするときには年表と地図が必須でしたが、それ無しでは理解が薄いということを実感しました。元が日経ビジネス電子版での連載ということなので、1回完結で読む分には面白いのかもしれません。受験生の世界史勉強には役に立たないけど、昔の記憶
2023年9月1日
第34 回 Labor hoarding(人材の囲い込み、雇用保蔵)
第34回 Labor hoarding(人材の囲い込み、雇用保蔵) 気がつけば2023年も最後の月。米国の株式指数は史上最高値をつける状況が続いています。 さてその米国経済を占ううえで、目下最も重要なのが雇用市場です。そこで今月の言葉はhoardingを取り上げます。 リーダーズ英和辞典でhoardingをひくと、最初に「秘蔵、退蔵、死蔵、貯蔵、貯蓄、買いだめ、貯蓄物」とありますが、2つ目に「(建設現場などの)板囲い、広告版、掲示板」とあります。「板囲い」という言葉になじみがなかったのですが、Oxford Advanced Larner's Dictionary の2つ目に「 a temporary fence made of boards that is placed around an area of land until a building has been built」とありました。工事に入る前の更地を囲んでいて看板に「○○様邸宅」みたいなのが書いてある、あれのことらしいです。 最近、労働市場でlabor hoardingという行為が見
2023年8月8日


2023年6月
2023年6月 「株式投資 長期投資で成功するための完全ガイド」 1.「株式投資 長期投資で成功するための完全ガイド」 ジェレミー・シーゲル 著 日経BP 久しぶりに積ん読がなくなったので、蔵書の中のものを再読しました。著者は株式投資に関する分野の重鎮、ジェレミー・シーゲル教授。以前はたまに教授の講義動画の翻訳を担当したりしましたが、なにせ御年77歳なので最近はあまり動画に出ているのを見ません。その動画でも書籍でも教授の話に出てくる資料の中で特に目を引くのは、米国株式の100年間のパフォーマンスを示したグラフ。人生100年時代を考えると、経済成長をしている国、利益を拡大している企業に長期投資をするというその基本的理論は間違っていません。 最近大学で株式や資産運用に関する基礎講座を担当させていただいていますが、これも若い世代に投資をしてもらいたいという考えに基づくものです。人はそれぞれ能力(キリスト教で言うところのタラントンですね)が違いますが、平等に与えられているのは時間です。時間を生かして、投資を通じて経済的自由を獲得できるのであれば、ぜひ
2023年7月1日


2023年5月
2023年5月 「クリステンセン経営論」 1.「クリステンセン経営論」 クレイトンM.クリステンセン 著 ダイヤモンド社 投資関連のレポートを翻訳している方は頻繁に目にする「disruption」という言葉。もちろんdisruprive innovation, disruptive technologyとの関連で出てくるわけですが、果たしてその「破壊的」とはどんなものなのか?いったん古典に戻って考えてみようと思ったのが本著を選んだ理由です。本著は有名な「イノベーションのジレンマ」から比較的最近のハーバードビジネスレビューに寄稿されたクリステンセンの論文を収録しているので、さまざまな角度から同氏の考え方、理論に触れることができます。 秀逸なのが第13章「プロフェッショナル人生論」。1稿だけビジネス理論と少し離れ、クリスチャンであるクリステンセンの生きるためのアドバイスをまとめた章です。「自分の資源を正しく配分する。個人の時間とエネルギー、そして能力をどう配分するかの意思決定が、最終的には人生の戦略を決める(P355)」。 10年ほど前に、20
2023年6月1日


2023年4月
2023年4月 「経営や会計の事はよくわかりませんが、儲かっている会社を教えてください」 1.「経営や会計のことはよくわかりませんが、儲かっている会社を教えてください!」 川口宏之 著 ダイヤモンド社 昨年からMoney Insiderで金融関連の翻訳や記事を担当させていただいております。その中で実感するのは日本では「お金」に関する知識や教育が進んでいないなぁということ。昨今は「金融リタラシー」という言葉で括られる分野かと思いますが、小さい頃からのお小遣いの使い方および貯め方、クレジットカードの使い方、金融商品の内容、数々の金融市場の仕組み・・・・・・挙げたらきりがありません。なまじ儒教精神が残っているからなのか「お金」=「清貧ではない」というマインドが染みついているのかわかりませんが、お金と付き合わずに一生過ごせる人などいないの現代の世の中、お金に関する知識が少しあるだけで、もっと大事なことに時間も体力も使えるのではないかと思います。 前置きが長くなってしまいましたが、そんなことを考えて今年は少し金融教育等に時間を注ぎたいと思っています。そ
2023年5月1日


2023年3月
2023年3月 「ESG投資で激変!2030年会社員の未来」 1.「ESG投資で激変!2030年会社員の未来」 市川祐子 日経BPマーケティング 最近はIR担当の方がだいぶ増えてきましたが、一昔前は元YAHOOの浜辺真紀子さんか、この著書の楽天の市川さんしか知名度のある方がいらっしゃらなかった気がいたします。その市川さんがESGをわかりやすく説明しようとした書籍。普通の会社員の方の中には「一生懸命ESGを標榜することに何の意義があるのか」という点がいまいち腑に落ちていない方、多いのではないでしょうか?実際、企業経営者とお話する機会があっても、言葉の節々に「やりゃいいんでしょ?」というやっつけ仕事感がちらちら見えており、「社外取締役に外国人女性を入れれば一発クリア!」みたいな発想をお持ちの方がまだ多い印象を受けます。そんな中で、ESGが企業価値向上にrelevantだということをものすごくわかりやすく、かみ砕いて説明しています。正直を言うと、前著(楽天IR戦記)はかなり偏っている印象を受けたので恐る恐る読んでみたわけですが、ESGをわかりやすく説
2023年4月1日


2023年1月/2月
2023年1/2月 「世界インフレの謎」 1.「世界インフレの謎」 渡辺努 講談社現代新書 1年のうちでいわゆる「ニッパチ(2月/8月)」は企業が最も暇だと言われておりますが、ことボッチ企業の私目には会社の決算と確定申告と言う二大難敵が構えているのがこの時期。自然と読書の時間も削られてしまい、昨年同様2カ月分のご紹介となってしまいました。 さて、今月は東大の渡辺努先生の著書。昨今話題のインフレについて、巷ではロシアによるウクライナ侵攻やコロナ後の供給制約がその要因だというような言われ方もしているが、さにあらず。基本は人々の行動変容が原因だと説いています。この点については各投資銀行のレポートなどでも書かれており、実はさほど目新しい視点ではないのですが、コロナが一服し、インフレが加速し、今度はいつ景気後退に陥り金利が転換するかに注目が集まる今、全体像を捉え、振り返るのに有益な本です。 日本は30年にわたり賃金が凍結された状態にありますが、これを解凍するには供給サイドへの働きかけもやはり必要なのでしょう。そう考えると、自動車業界を皮切りに春闘で賃
2023年3月1日
第33 回 Hung deal(ハング・ディール)
第33回 Hung deal(ハング・ディール) イーロン・マスクがTwitter買収に当たって銀行から借り入れた融資の販売に、銀行が苦戦しているというニュースがありました。 本日はその中のhung dealsという言葉を取り上げたいと思います。 Also last year, Barclays was among a group of banks that agreed to fund Elon Musk’s takeover of Twitter Inc., in what became one of the biggest so-called “hung deals” as banks were unable to sell on their debt commitments. https://www.wsj.com/articles/barclays-barc-q4-earnings-report-2022-beea1163?mod=Searchresults_pos1&page=1 試訳:また昨年、バークレイズはイーロン・マスク
2023年2月26日


2022年12月
2022年12月 「教養としての投資」 1.「教養としての投資」 奥野一成 著 ダイヤモンド社 目下奥野さん月間が続いておりまして、今月はこちら。 枕詞に「ビジネスエリートになるための」とありますが、どちらかと言えば投資や証券、金融初心者向けの著で、新卒の方に読んでいただく方が良いくらいの基礎的な内容です。これを読んでもビジネスエリートにはなれません。 2020年10月にやはり奥野さん著の「先生、お金持ちになるにはどうしたらよいですか?」という本をご紹介しましたが、こちらの本との重複感があります。どちらもファイナンス理論を語る本ではなく、その前段階としてなぜ企業価値を高める企業への投資が必要なのか、という点を強調しているものなので、正直どちらか一冊で良かったのでは? 今や日本のウォーレンバフェットのような存在なので、今度は子供向けではなく、大人向けの入門書を書いて欲しいという依頼があったのでしょう。羨ましい限り。でも、そもそも金融は専門分野なので、特に金融を専攻していなければ大人も高校生も変わらない気がします。 ちなみに「教養としての・
2023年1月1日


2025年11/12月
2025年11/12月 1.「資本コスト経営のすすめ」 野口真人 著 日本経済新聞出版 東証のPBR引上げ要請(正確に言うと、そんな名前で要請を出したわけではありません) から早3年。当初は自社株買いや増配といった財務レバレッジの引き上げ策ばかりが行われていましたが、最近は、抜本的な事業改革に踏み出す企業が増えてきました。IR界隈にいると「資本コストの引き下げ」という言葉はちょっと聞き飽きた感があります。そんな中で今年4月に出た本書。著者はファイナンスをこれでもかというくらいわかりやすく説明する名手の野口真人さん。ということでこの本の薄さでどこまでわかりやすく書いているのか気になって買ってみました。 本書は資本コストとは無縁の経営者・経営企画部を対象に、具体的な開示上の改善案まで提起することを目指したものですが、さすがにちょっと駆け足すぎる感じを受けました。たしかにわかりやすいのですが逆に丁寧さに欠けるというか、対象読者の知識レベルを初級に設定した割には不親切なような気がします。前半の知識編だけでも一冊分の本にした方がよかったような・・・


2025年10月
2025年10月 「パンチラインの言語学」 1.「パンチラインの言語学」川添愛 著 朝日新聞出版 言語学者、川添愛さんの新著。タイトルからして絶対「バーリトードゥ」系だろうと推察したので、最近地域図書館に追加された「LINEで買ってほしい本のリクエスト」機能を使って申請してみました。するとあっという間に図書館が購入してくれたので予約一番、新品本を読むことができました。地方税を払っているかいを感じた瞬間です。ふるさと納税で地方の産物をもらうばかりが税金の使い道ではないなぁとつくづく感じました。 さて、パンチラインとは、いわゆる名セリフを指すらしいです。名セリフと言われても、どうも著者と指向が違うらしく、取り上げられたパンチラインの半分くらいしか知らなかったわけですが、それはさておき軽い読み物としてはやはりおもしろい。「めざせ、かっちゃん、甲子園」が七五調でゴロが良いとか、末尾につく「よ」を考察してみたりだとか、普段はあまり気にしていない点を掘り下げているところにオタク感がちりばめられています。翻訳などというオタク域の仕事をしている人間には(私のオ


2025年9月
2025年9月 「論理的思考とは何か」 1. 「論理的思考とは何か」 渡邊雅子著 岩波新書 英文を書くことを生業にしている者は、ロジカルシンキングに基づいて文章を書くことが至上命題とされています。ライティングの講座では必ず、主張ー本論ー結論といった構造を取ること、パラグラフごとにその型を踏襲することを嫌と言うほどやらされます。しかし、この型は米国を中心とした経済効率性の達成を目的としたレトリック(人を説得する技術)に基づいており、アングロサクソン系のライティングが中心の世界でのみ、これが唯一無二のレトリックだと思われているに過ぎないらしいのです(知らなかった!)。 応用言語学者のカプランによれば、読み手が「論理的である」と感じるには統一性と一貫性が必要であり、「読み手」がそう感じるかどうかはその文化や社会の中で馴染んだパターンに落とし込む必要があるそうです。 筆者はそのパターンをアングロサクソン系のエッセイ、フランス系のディセウタシオン、イラン系のエンシャ―、日本系の感想文の4つに分けて説明しています。論理的思考が目的に応じて形を変えて存在す
COLUMN
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