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2024年1月
2024年1月 「やっぱり英語をやりたい!」 1.「やっぱり英語をやりたい!」 鳥飼玖美子 著 幻冬舎新刊 SNSで新刊のアナウンスを目にしてポチった一冊。「やっぱり英語をやりたい!」というタイトルは、日本人の英語コンプレックスをよく表している気がします。そもそもこれだけの長い時間英語教育というものを受けているのにも関わらず、また、受験英語であれほど難解な文法・読解問題をこなしてきているにもかかわらず、英語をもう一回やらなければ、という気にさせられるのが諸悪の根源です。私の英語学習ブームには、文法⇒リスニング⇒英会話⇒読解⇒ライティングなどそのときどきで波はあるのですが、英語の勉強を常に続けてきた身としてやはり気になるタイトルです。 しかしながら、内容としてはNHK「太田光のつぶやき英語」で出会ったいろいろな人の英語学習法を紹介や、編集者からの質問に対する回答で進んでいきます。もちろんテレビを観ていない人には良いのかもしれませんが、だったらテレビを観た方が実践的なような気もしないでもない。さらにQ&Aの内容を見ると、「海外の方と話すことに慣れ
2024年2月1日


2023年12月
2023年12月 「経営戦略としての人的資本開示」 1.「経営戦略としての人的資本開示」 一般社団法人HRテクノロジーコンソーシアム(編) 日本能率協会マネジメントセンター 2023年3月期から有報における人的資本開示が始まりました。人的資本開示の国際規格「ISO30414」では1.ワークフォース可能性、2.ダイバーシティ、3.リーダーシップ、4.後継者計画、5.採用・移動・離職、6.スキル・ケイパビリティ、7.コスト、8.生産性、9. 組織文化、10.組織の健康・安全・ウェルビーイング、11. コンプライアンス・倫理 という11の人的資本領域において58のメトリックスを示しています(P56)。 IRという視点から見ると、人的資本開示は気候変動関連の開示よりはるかに重要な意味があると思います。気候変動の場合、製造業であれば自社に対するインパクト以外に、自社が与えるインパクト(の軽減)というダブルマテリアリティという側面において、自社の取り組みが企業価値の向上につながるケースは多いですが、中小企業やサービス業の場合、能動的に気候変動に対して対策
2024年1月1日


2023年11月
2023年11月 「刺さる英語 マーケティング翻訳術」 1.「刺さる英語 マーケティング翻訳術」 岩木 貴子 著 三修社 出版記念セミナーのようなものに申し込んでいたはずなのに、忙しさに負けて参加しなかったのですが、人づてに「この本良い!」と紹介をうけ、遅まきながら購入。日英翻訳をする際は常に遠田和子さんの言う「等価であるかどうか」という点を意識しているわけですが、ことマーケティング要素の強い文章になると、どこまでが等価なのかわからなくなってきます。この本はマーケティング翻訳において心がけるべきことをまとめつつ、実践的な演習も網羅しているのでとても参考になりました。 マーケティングというのは基本的に何かを「売る」ための文章。これは私の対応分野であるIRにおいても同じで、企業の取り組みをアピールし、企業を投資家に「売る」ことは大事なポイントです。特に、謙虚な日本人の書いた統合報告書や中計などをいかに投資家にアピールし、企業を買ってもらえるような書き方をするか、という視点を持つ必要があります。 パートⅢの実践編がこの本の中核ですが、日本語と訳例
2023年12月1日


2023年10月
2023年10月 「投資家をファンに変える株主ケア」 1.「投資家をファンに変える株主ケア」デービッド・スノーディ 著 アスコム IRコンサルタントとして、ある企業の方に個人投資家を増やすよう進言したことがあります。会社は有名な機関投資家、その裏にいるアセットオーナーに株を持ってもらうのを好みますが、個人投資家が保有しない株は流動性も乏しく、一方向に振れやすいことから個人投資家のファンを増やす施策を打つべきだと述べました。結果的にその提案には賛同を得られなかったわけですが、この本は株主ケアをすることによるボラティリティの低下効果を訴えており、まさに私が提案した内容そのものでした。 ROEの高い企業の方がボラティリティが高いという分析結果にはなるほどと思いましたが、考えて見れば、ROEが高く優良と言われる銘柄はインデックス投資家が必ず保有するし、業績の有無と関係なく株価が変動するケースもあるので納得できます。ファイナンスではボラティリティ=リスクですので、リスクを抑えることによりすべての投資家の利益になるというロジックは理に適っています。...
2023年11月1日


2023年9月
2023年9月 「言語の本質」 1.「言語の本質」今井むつみ 秋田喜美 著 中公新書 認知科学者、言語心理学者の2人がタッグを組んだ書籍。子どもが使うオノマトペの研究から始まり、最終的にアブダクション推論にたどり着きます。日頃言語を相手に仕事をしているわりには、言葉に対する洞察も愛情も薄い私ではありますが、本書はとても興味深く拝読いたしました。オノマトペがアイコン(( ´艸`)←こういうものやプレゼンなどに良く使われるもの)と同じように、表す対象と表されるものの間に類似性(アイコン性)があること、また、濁音や発音、口の開け方などによって、オノマトペがそのアイコン性をさらに高めている(ダンダンのほうがタンタンよりも激しさを表す等)という考察は実に面白いです。 さらに英語にオノマトペが少ない理由として、日本語は副詞や形容詞で動作を表すことが多い( とぼとぼ 歩く)が、英語にはその行為自体を表す動詞が多い(plod)と書かれており、だからこそ英語の場合は必死に辞書を引いてそれにぴったり合う「単語」を見つける努力が必要なのだなぁとつくづく思いました。
2023年10月1日


2023年7月/8月
2023年7/8月 「一気読み世界史」 1.「一気読み世界史」出口治明 著 日経BP社 いつも元気な立命館APUの出口学長による7時間で世界史を学ぶための本。「はじめに」の中に「『人間って、こういう大きい流れの中で生きてきたんやな』ということをわかっていただければ、すごくありがたいと思います」とあります。今はウクライナで戦争が起き、トルコやモロッコには地震災害が発生し、と大事件が多発していますが、500年後の教科書には「ウクライナとロシアの小競り合いが起き、各地で地震や背自然災害が発生した」の1行で終わるのかもしれません。 そういう意味ではざざーーっと人類5000年の歴史を斜め読みするとう発想自体はとても面白いのですが、なにせ地域が飛びまくるので、読んでいてもなかなか頭の中で点と点が結びつかない。高校時代に世界史の勉強をするときには年表と地図が必須でしたが、それ無しでは理解が薄いということを実感しました。元が日経ビジネス電子版での連載ということなので、1回完結で読む分には面白いのかもしれません。受験生の世界史勉強には役に立たないけど、昔の記憶
2023年9月1日


2023年6月
2023年6月 「株式投資 長期投資で成功するための完全ガイド」 1.「株式投資 長期投資で成功するための完全ガイド」 ジェレミー・シーゲル 著 日経BP 久しぶりに積ん読がなくなったので、蔵書の中のものを再読しました。著者は株式投資に関する分野の重鎮、ジェレミー・シーゲル教授。以前はたまに教授の講義動画の翻訳を担当したりしましたが、なにせ御年77歳なので最近はあまり動画に出ているのを見ません。その動画でも書籍でも教授の話に出てくる資料の中で特に目を引くのは、米国株式の100年間のパフォーマンスを示したグラフ。人生100年時代を考えると、経済成長をしている国、利益を拡大している企業に長期投資をするというその基本的理論は間違っていません。 最近大学で株式や資産運用に関する基礎講座を担当させていただいていますが、これも若い世代に投資をしてもらいたいという考えに基づくものです。人はそれぞれ能力(キリスト教で言うところのタラントンですね)が違いますが、平等に与えられているのは時間です。時間を生かして、投資を通じて経済的自由を獲得できるのであれば、ぜひ
2023年7月1日


2023年5月
2023年5月 「クリステンセン経営論」 1.「クリステンセン経営論」 クレイトンM.クリステンセン 著 ダイヤモンド社 投資関連のレポートを翻訳している方は頻繁に目にする「disruption」という言葉。もちろんdisruprive innovation, disruptive technologyとの関連で出てくるわけですが、果たしてその「破壊的」とはどんなものなのか?いったん古典に戻って考えてみようと思ったのが本著を選んだ理由です。本著は有名な「イノベーションのジレンマ」から比較的最近のハーバードビジネスレビューに寄稿されたクリステンセンの論文を収録しているので、さまざまな角度から同氏の考え方、理論に触れることができます。 秀逸なのが第13章「プロフェッショナル人生論」。1稿だけビジネス理論と少し離れ、クリスチャンであるクリステンセンの生きるためのアドバイスをまとめた章です。「自分の資源を正しく配分する。個人の時間とエネルギー、そして能力をどう配分するかの意思決定が、最終的には人生の戦略を決める(P355)」。 10年ほど前に、20
2023年6月1日


2023年4月
2023年4月 「経営や会計の事はよくわかりませんが、儲かっている会社を教えてください」 1.「経営や会計のことはよくわかりませんが、儲かっている会社を教えてください!」 川口宏之 著 ダイヤモンド社 昨年からMoney Insiderで金融関連の翻訳や記事を担当させていただいております。その中で実感するのは日本では「お金」に関する知識や教育が進んでいないなぁということ。昨今は「金融リタラシー」という言葉で括られる分野かと思いますが、小さい頃からのお小遣いの使い方および貯め方、クレジットカードの使い方、金融商品の内容、数々の金融市場の仕組み・・・・・・挙げたらきりがありません。なまじ儒教精神が残っているからなのか「お金」=「清貧ではない」というマインドが染みついているのかわかりませんが、お金と付き合わずに一生過ごせる人などいないの現代の世の中、お金に関する知識が少しあるだけで、もっと大事なことに時間も体力も使えるのではないかと思います。 前置きが長くなってしまいましたが、そんなことを考えて今年は少し金融教育等に時間を注ぎたいと思っています。そ
2023年5月1日


2023年3月
2023年3月 「ESG投資で激変!2030年会社員の未来」 1.「ESG投資で激変!2030年会社員の未来」 市川祐子 日経BPマーケティング 最近はIR担当の方がだいぶ増えてきましたが、一昔前は元YAHOOの浜辺真紀子さんか、この著書の楽天の市川さんしか知名度のある方がいらっしゃらなかった気がいたします。その市川さんがESGをわかりやすく説明しようとした書籍。普通の会社員の方の中には「一生懸命ESGを標榜することに何の意義があるのか」という点がいまいち腑に落ちていない方、多いのではないでしょうか?実際、企業経営者とお話する機会があっても、言葉の節々に「やりゃいいんでしょ?」というやっつけ仕事感がちらちら見えており、「社外取締役に外国人女性を入れれば一発クリア!」みたいな発想をお持ちの方がまだ多い印象を受けます。そんな中で、ESGが企業価値向上にrelevantだということをものすごくわかりやすく、かみ砕いて説明しています。正直を言うと、前著(楽天IR戦記)はかなり偏っている印象を受けたので恐る恐る読んでみたわけですが、ESGをわかりやすく説
2023年4月1日


2023年1月/2月
2023年1/2月 「世界インフレの謎」 1.「世界インフレの謎」 渡辺努 講談社現代新書 1年のうちでいわゆる「ニッパチ(2月/8月)」は企業が最も暇だと言われておりますが、ことボッチ企業の私目には会社の決算と確定申告と言う二大難敵が構えているのがこの時期。自然と読書の時間も削られてしまい、昨年同様2カ月分のご紹介となってしまいました。 さて、今月は東大の渡辺努先生の著書。昨今話題のインフレについて、巷ではロシアによるウクライナ侵攻やコロナ後の供給制約がその要因だというような言われ方もしているが、さにあらず。基本は人々の行動変容が原因だと説いています。この点については各投資銀行のレポートなどでも書かれており、実はさほど目新しい視点ではないのですが、コロナが一服し、インフレが加速し、今度はいつ景気後退に陥り金利が転換するかに注目が集まる今、全体像を捉え、振り返るのに有益な本です。 日本は30年にわたり賃金が凍結された状態にありますが、これを解凍するには供給サイドへの働きかけもやはり必要なのでしょう。そう考えると、自動車業界を皮切りに春闘で賃
2023年3月1日


2022年12月
2022年12月 「教養としての投資」 1.「教養としての投資」 奥野一成 著 ダイヤモンド社 目下奥野さん月間が続いておりまして、今月はこちら。 枕詞に「ビジネスエリートになるための」とありますが、どちらかと言えば投資や証券、金融初心者向けの著で、新卒の方に読んでいただく方が良いくらいの基礎的な内容です。これを読んでもビジネスエリートにはなれません。 2020年10月にやはり奥野さん著の「先生、お金持ちになるにはどうしたらよいですか?」という本をご紹介しましたが、こちらの本との重複感があります。どちらもファイナンス理論を語る本ではなく、その前段階としてなぜ企業価値を高める企業への投資が必要なのか、という点を強調しているものなので、正直どちらか一冊で良かったのでは? 今や日本のウォーレンバフェットのような存在なので、今度は子供向けではなく、大人向けの入門書を書いて欲しいという依頼があったのでしょう。羨ましい限り。でも、そもそも金融は専門分野なので、特に金融を専攻していなければ大人も高校生も変わらない気がします。 ちなみに「教養としての・
2023年1月1日


2022年11月
2022年11月 「ROIC経営実践編 事業ポートフォリオの組換えと企業価値向上」 1.「ROIC経営実践編 事業ポートフォリオの組換えと企業価値向上」 昨今注目のROICですが、企業経営においてどのようにROICを使ったら良いかという答えは、大手企業でなければなかなか出ていないのではないでしょうか?こちらの本は前作「ROIC経営:稼ぐ力の創造と戦略的対話」の第二弾。表題に「実践編」と打っているように、ROICのコンセプトは分かったけれども実際に事業ポートフォリオにどのように応用すれば良いかを説明しています。 かく言う私も企業経営者ではなく、この本を読んでも実際に手を動かして事業ポートフォリオの組み換えを行えるわけではありません。だから「腑に落ちた」と言えないところが残念なのですが、それでも事業ポートフォリオの評価方法や1年間のサイクルの回し方など真似できる点は多いと思います。 コーポレートガバナンス・コードで資本コストを意識した経営が謳われていますが、実際のところ東証企業3800社(多すぎ!)の中でどこまでROICを実践できるのかは疑問です
2022年12月1日


2022年10月
2022年10月 「先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?」 1.「先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?」 奥野一成 ダイヤモンド社 農中アセットの奥野さんが子供向けに書いた本。 高校生向けに金融授業をやりたいなぁと最近ひそかに企んでいるので、ついつい手に取ってしまいました。 日本では圧倒的にお金についての教育が不足していると実感します。その理由の1つが、給与所得者が「確定申告不要」な源泉徴収で納税を終わらせていることではないでしょうか。私は諸般諸々の事情で最初に会社に入った2年間以降、毎年確定申告をしています。そうすると所得が多い少ないに関わらず、取れる控除は取ろう!と毎年の税制改革にも敏感になるし、株式の売買にも慎重になります。税務署が「税金の徴収不足のときだけ言ってくるけど、超過納付のときは教えてくれない」場所だということを知ったのもこの時です。 この本には「お金持ち」になるにはどうしたらいいかという、一見株式投資の薦めのようなタイトルがつけられていますが、金融の授業というよりも、think for yourself, i
2022年11月7日


2022年9月
2022年9月 「図解&ストーリー『資本コスト』入門」 1.「図解&ストーリー『資本コスト』入門」 岡俊子 著 中央経済社 HPやツイッターでも「IRコンサルティングやってます!(本日も頑張って営業中!)」みたいなことをちょくちょく書いておりますが、企業の方と話す時になかなかPL思考が抜けないなぁと感じるのがこの資本コストの話が出るときです。 新しいガバナンスコード原則5-2では「自社の資本コストを的確に把握したうえで、~収益力・資本効率当に関する目標を掲示」せよと言っているので、「そりゃあもちろん、上場企業は資本コストをちゃんとはじいてるのよね」と思ったりしますが、さにあらず。そんなことは225銘柄の優良企業とか、意識高い系の会社であって、資本コストという概念を説明することすら難しいという場合もあります。 ということで、しばらく資本コストの伝道師になろうかと思い、簡単に説明している本はないかなぁと思って出会ったのがこちらの本。難しい数字の話をほとんど出さずに資本コストの概念をうまく説明していると思います。いまさら資本コストって何?と聞け
2022年10月1日


2022年8月
2022年8月 「お金はサルを進化させたか よき人生のための日常経済学」 1.「お金はサルを進化させたか よき人生のための日常経済学」野口真人 著 日経BP社 企業評価会社を経営されている野口真人さんの著。他にも「パンダをいくらで買いますか?」とか人を食ったようなタイトルの本がありますが、それでも内容は超専門的。わかりにくいファイナンスの内容をよくもここまでわかりやすい事例を出して説明しているなぁと感心します。最近何度か会計・ファイナンスに関するオンラインセミナーを担当させて頂いておりますが、この方の著作はファイナンスというものになじみのない方々にいかに興味を持ってもらい、わかりやすく説明するかのお手本として最高の参考書です。 とはいえ、ちょっとこの本は行動経済学にまで足を突っ込んでいるので、紙面が足りないという感じも否めません。特に第六章のリスクとリターンについては、これだけで証券アナリスト試験の最初の数章を使ってしまうテーマなので、若干消化不良かもしれません。しかし、この本を足掛かりにファイナンスというものに興味を持ってもらうのには最適の入
2022年9月1日


2022年7月
2022年7月 「破壊 新旧激突時代を生き抜く生存戦略」 1.「破壊 新旧激突時代を生き抜く生存戦略」 葉村正樹 ダイヤモンド社 Disruptionーこの言葉はしょっちゅう翻訳対象の英文の中に出てくるわけですが、実のところ毎日ぼっちで翻訳をしていることが多い私がこの創造的破壊を実感することは少なく、自分とはあまり関係ない単語だなぁと思っておりました。 しかし、IR業務を通じて企業と関わる中で、何も先端技術ではなくともディスラプションというのは割と身近に起きている(そして起こすことが可能)だということを実感することも多くなってきました。 そんな中で出会った今月の1冊。企業がディスラプションを起こし、生き残っていくうえで、1. 人間中心に考える、2.存在価値を見極める、3.時空を制する という3つの戦略が重要だと説いています。 あれ?よくよく見ると、1は「マーケットイン」の発想、2は昨今のパーパス経営に通じるじゃありませんか。ディスラプションという仰々しい言葉を使わなくても、企業価値の創造にはこうした発想が欠かせないようです。 しかし・・・...
2022年8月1日


2022年6月
2022年6月 「投資家と経営者をつなぐ実践的IR戦略」 1.「投資家と経営者をつなぐ実践的IR戦略~自社の時価総額を引き上げる全シナリオ~」 飯塚洋一 著 ダイヤモンド社 今年4月の東証市場改革により、東証上場企業はプライム、スタンダード、グロースの3つに分けられました。プライム企業の中には基準を満たしていない「なんちゃって」プライムも300社近くあり、今回の改革が東証が本当に目指す「日本企業の企業価値を向上させる後押し」になるかどうかはいささか疑問です。 とはいえ、試験前1週間にならないと勉強し始めない我が家の子供と同じく、人間切羽詰まらないとやらないというのも事実。やれ浮動株比率が35%以上じゃなきゃだめ、とか、TCFDに準拠した開示をしないとだめ、だとか外堀を埋められて初めて「これはまずいのでは?」とIRに本腰を入れ始めた企業も多いように思います。 さて、こちらの本は2014年初版とやや古いですが、IRの目的やエッセンスといったものがわかりやすく実体験として書かれています。内容はいたってスタンダードで当たり前と言えば当たり前なのですが、実
2022年7月1日


2022年5月
2022年5月 「サイコロジー・オブ・マネー」 1. 「サイコロジー・オブ・マネー」 モーガン・ハウセル著 児島修訳 ダイヤモンド社 ここ数カ月読んでいる経済関連の書はなぜか行動経済学に関わるものが多く、先月の「ノイズ」も然りなわけですが、この本もお金、特に投資にまつわる心理について書いた書籍です。 いま巷の投資理論はマーコウィッツのMPT等に端を発する理論に基づいていると理解していますが(違っていたらごめんなさい)、これら投資理論は数々の仮定の上に成り立っています。人は合理的に行動する、ある資産との相関は一定等・・・。これら理論が投資運用のモデル化や金融工学の発展に果たした役割は絶大であり、それ自体を否定する気はまったくありませんが、その昔ケインズが株式投資を美人投票と評したように、そもそも投資と心理は切っても切り離せず、それを無視して投資を語ることはできないわけです。 それなのに、一時期のLTCMなどウォールストリートのエリート達が理論に基づいてバリバリレバレッジをかけて裁定取引を行い、結局それで飛んだ(揚げ句に立つ鳥跡を濁しまくって、各国
2022年6月1日


2022年4月
2022年4月 「NOISE【ノイズ】」 1.NOISE【ノイズ】ダニエル・カーネマン、オリヴィエ・シボニ―、キャス・R・サンスティーン 著 村井章子 訳 早川書房 ノーベル経済学賞受賞者のダニエル・カーネマンによる著。人の判断結果を著しくゆがめるエラーを、バイアスとノイズに分け、特にノイズに焦点を当てて論じています。ノイズは著しく不公平で、多くのコストを生みますが、そうしたノイズを分析し、論じ、さらにノイズを削減するための施策まで盛り込んだ極めて実践的な書です。不確実な現実においてアルゴリズムは完全ではないものの、AIのようなものはコスト見合いと言う点でも一定の効果を発揮すると論じています。 先日、都内の有名私立大学病院に行った知人の大腸にポリープが見つかりました。内視鏡で見たところ良性なので、手術は急がないと言われたそうです。その後、他の所見で都内の有名国立病院にかかったところ、そこの病院のA医師はこの大腸ポリープは「面構え」は良いが取りにくいポリープなので内視鏡ではなく普通の手術にしましょうと言い、B医師は「良かったですね。ガンです
2022年5月1日


2025年11/12月
2025年11/12月 1.「資本コスト経営のすすめ」 野口真人 著 日本経済新聞出版 東証のPBR引上げ要請(正確に言うと、そんな名前で要請を出したわけではありません) から早3年。当初は自社株買いや増配といった財務レバレッジの引き上げ策ばかりが行われていましたが、最近は、抜本的な事業改革に踏み出す企業が増えてきました。IR界隈にいると「資本コストの引き下げ」という言葉はちょっと聞き飽きた感があります。そんな中で今年4月に出た本書。著者はファイナンスをこれでもかというくらいわかりやすく説明する名手の野口真人さん。ということでこの本の薄さでどこまでわかりやすく書いているのか気になって買ってみました。 本書は資本コストとは無縁の経営者・経営企画部を対象に、具体的な開示上の改善案まで提起することを目指したものですが、さすがにちょっと駆け足すぎる感じを受けました。たしかにわかりやすいのですが逆に丁寧さに欠けるというか、対象読者の知識レベルを初級に設定した割には不親切なような気がします。前半の知識編だけでも一冊分の本にした方がよかったような・・・


2025年10月
2025年10月 「パンチラインの言語学」 1.「パンチラインの言語学」川添愛 著 朝日新聞出版 言語学者、川添愛さんの新著。タイトルからして絶対「バーリトードゥ」系だろうと推察したので、最近地域図書館に追加された「LINEで買ってほしい本のリクエスト」機能を使って申請してみました。するとあっという間に図書館が購入してくれたので予約一番、新品本を読むことができました。地方税を払っているかいを感じた瞬間です。ふるさと納税で地方の産物をもらうばかりが税金の使い道ではないなぁとつくづく感じました。 さて、パンチラインとは、いわゆる名セリフを指すらしいです。名セリフと言われても、どうも著者と指向が違うらしく、取り上げられたパンチラインの半分くらいしか知らなかったわけですが、それはさておき軽い読み物としてはやはりおもしろい。「めざせ、かっちゃん、甲子園」が七五調でゴロが良いとか、末尾につく「よ」を考察してみたりだとか、普段はあまり気にしていない点を掘り下げているところにオタク感がちりばめられています。翻訳などというオタク域の仕事をしている人間には(私のオ


2025年9月
2025年9月 「論理的思考とは何か」 1. 「論理的思考とは何か」 渡邊雅子著 岩波新書 英文を書くことを生業にしている者は、ロジカルシンキングに基づいて文章を書くことが至上命題とされています。ライティングの講座では必ず、主張ー本論ー結論といった構造を取ること、パラグラフごとにその型を踏襲することを嫌と言うほどやらされます。しかし、この型は米国を中心とした経済効率性の達成を目的としたレトリック(人を説得する技術)に基づいており、アングロサクソン系のライティングが中心の世界でのみ、これが唯一無二のレトリックだと思われているに過ぎないらしいのです(知らなかった!)。 応用言語学者のカプランによれば、読み手が「論理的である」と感じるには統一性と一貫性が必要であり、「読み手」がそう感じるかどうかはその文化や社会の中で馴染んだパターンに落とし込む必要があるそうです。 筆者はそのパターンをアングロサクソン系のエッセイ、フランス系のディセウタシオン、イラン系のエンシャ―、日本系の感想文の4つに分けて説明しています。論理的思考が目的に応じて形を変えて存在す
COLUMN
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