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2021年9月
2021年9月 「重要証人 ウイグルの強制収容所を逃れて」 1.「重要証人 ウイグルの強制収容所を逃れて」サイラグル・サウトバイ/アレクサンドラ・カヴァーリウス 著 草思社 恥ずかしながら、私は先日まで新疆ウイグル自治区の人権問題と言われてもまったくピンと来ていませんでした。何が起こっているのかも知らず、まったく受け身で、気に入ってくる情報にしか耳を傾けていなかったのです。報道の自由がまだ残されている香港での民主主義の弾圧にはテレビの前で怒りを感じても、情報統制が完全になされているウイグル、モンゴル、チベットといった中国大陸の様子は自分が知ろうとしなければわかりません。 著者は新疆ウイグル自治区で生まれ育ったカザフ女性。彼女は突然再教育施設と呼ばれる強制収容所に教師として連れてこられ、そこで少数民族に対する壮絶な弾圧を目にします。 昨今の中国を見ると、一対一路構想や香港への対応、南シナ海にいきなり島を作ったり、はたまた突然IT企業や塾産業に規制をかけたりと、やっぱり共産主義国なのね、と実感することが多々あります。何かがおかしい。中国は一体何を考
2021年10月1日
第26回 Sausage-making(政策策定)
第26回 Sausage-making(政策策定) 一昨日、日本で新たな自民党総裁が誕生しました。今月中には衆院議員選挙が公示される可能性が高く、コロナ下で政治の秋になりそうです。 一方、誕生から比較的高い支持率を保ってきたバイデン政権ですが、ここにきてアフガン対応をめぐり支持率が急低下、目玉のインフラ法案の可決が危ぶまれており、アメリカも政治の秋到来です。 さて、本日の言葉は「sausage-making」。このアメリカ議会での混とんとした状況を伝える記事の中で出てきました。 “We’re in the middle of it right now. It’s messy,” said White House press secretary Jen Psaki. “ The sausage-making on Capitol Hill, policy-making is messy.” < https://www.wsj.com/articles/infrastructure-bills-fate-uncertain-heading-into
2021年10月1日
第25回 Stopped out(強制決済する、損切する)
第25回 Stopped out (強制決済する、損切する) 見慣れない言葉に出会ったとき、最初にすることは辞書を引くことですが、動詞に前置詞もしくは副詞が組み合わさった「句動詞」の場合、辞書を引いてもなかなかぴったりくる訳に出会えないことがあります。今回の「Stop out」もしっくりくる訳語が見つからず気持ちが悪く、ネット上を探し回りました。 The SAR is a technical indicator plotted on a price chart that will occasionally intersect with the price due to a reversal or loss of momentum in the security in question. When this intersection occurs, the trade is considered to be stopped out , and the opportunity exists to take the other side of the
2021年9月16日


2021年8月
2021年8月 「言語学バーリ・トゥード」 1.「言語学バーリ・トゥード」川添 愛著 東京大学出版会 リーガル翻訳・国際法務コミュニティの真栄里孝也さんにご紹介をいただいた本。「とても良い本ですよ」とのことでしたが、良い本を通り越して、もうとにかく面白過ぎる。これだけすいすいと進む朝読書も珍しい。 言語にまつわる真面目なトピックスを、プロレスや芸能やゲームなど超サブカルチャーと絡めながら説明していくスタイルで、もちろん言葉に関係する話はいたって専門的だし真面目なのですが、ところどころに「あーあれね」というような読者とのコンテクストの共有があってついついクスリと笑ってしまいます。プロレスなぞまったく見たことのない、プロレスラーの名前もほとんど知らない私でも面白く感じてしまうのは、文章の上手さなる技なのでしょう。人の書いたものを隠れ蓑に日々文章と接する仕事の端くれを担う者としては、読者をひきつけるこの圧倒的なリズム感はぜひ身につけたい技です。 個人的にはユーミンの「恋人がサンタクロース」の役割担い系に一票なのですが(ちょっとだけネタバレですいません)
2021年9月1日
第24回 Hockey stick(急騰)
第24回 Hockey stick(急騰) 株式用語には不思議な言葉がたくさんあります。 「たこ足配当」とか「塩漬け」とか最初に聞いたときはなんのこっちゃー?と思ったものですが、言われてみれば「説明系用語」なので画像を脳内で変換をしてみるとなるほどと納得できます。 ちなみに「たこ足配当」は、たこは餌がないと自分の足を食べてしまうというところから、配当原資がないのに資産を取り崩したりしながら配当することを言います。 また「塩漬け」は、料理において腐りやすい食べ物を長期保存や味付けのために食塩に漬けておくところから、上値で買った後株価が下落して含み損を抱えて、売るに売れなくなった状態を言います。 前置きが長くなりましたが、本日の言葉はHockey stickです。 こちらも初めて見たときはなんのこっちゃー?と思いましたが、ホッケーのスティックを思い描けばそれほど難しいこともありません。ホッケースティックの先のように急激に上昇する状態を指します。「うなぎ上り」とも言えるかもしれませんが、「うなぎ上り」は良い事の時にしか使わないような・・・・。一方ホッケ
2021年8月29日
第23回 Greenium (グリーンプレミアムが乗っている)
第23回 Greenium (グリーンプレミアムが乗っている) 新しい言葉を目にすると、つくづく言葉は生きているなぁと思います。単なる主観ですが、日本語では主に新しい言葉・用法を作る中心が10代の若者である一方、海外ではメディアや業界中心に新たな言葉が生まれている気がします。Brexitなどはその典型例ではないでしょうか。 昨今この言葉を見かけない日がないくらい一躍金融・社会の中心に躍り出たESGですが、社会的責任投資(SRI)はそもそも宗教上の信念などに基づいて、ある一定のセクター(アルコール、たばこ、武器等)を排除するという投資手法からスタートしました。特定のセクターを排除する投資手法が一般的だったため、リターンがベンチマークに劣りがちで、最初の頃は「SRIやESG投資は儲からない」と頑なに思われていました。 ところが、投資商品や戦略サイドでのイノベーションに加えて、企業の社会的責任が声高に叫ばれるようになると、こうした社会的責任を果たす企業の方がクオリティが高いと評価されるようになり、ESG投資のパフォーマンスが通常の投資に劣らないようにな
2021年8月17日
第22回 Agnostic (~に依存しない、どちらかに偏らない)
第22回 Agnostic (~に依存しない、どちらかに偏らない) 再び緊急事態宣言に突入。まさかのロックダウンまで議論され始めました。オリンピックも観戦できないのに、負担ばかり強いられる・・・・なんだか割の合わないことばかりが続きます。神はいないのか! ということで、本日の言葉は ”Agnostic”。 さて、”Agnostic”を辞書で引くと、判を押したように「不可知論の」「不可知論者の」と出てきますが。そもそも「不可知論」ってなんでしょう。国語辞書を引くと 精選版 日本国語大辞典:「哲学で、ある種の主題の認識が人間には不可能であるとする認識説。また、神学で、人間には神を認識することはできないとする宗教的認識説」 ぜんぜんわかりません・・・・ 広辞苑:「意識に与えられる感覚的経験の背後にある実在は論証的には認識できないという説・そういう実在を認める立場と、その有無も不確実とする立場とがある」 やっぱりわかりません・・・・・ 困っていろいろ見たところ、こちらのサイトにこのような解説がありました。 「~ものごとの本質や実在の根拠のようなものは、人
2021年8月2日


2021年7月
2021年7月 「教養としての地理」 1. 「教養としての地理」 PHP研究所 山岡信幸 著 朝読書用の本はもっぱら、皆様のおすすめ図書をチラ見してネットでポチポチ購入したもの、積読の中の蔵書、経年劣化のため何度読んでも新鮮に思える「既読本」、書店で気になったものから選んでいます。そういう意味では、5度目の緊急事態宣言が発令中でも書店が開いているのは嬉しい限り。この「教養としての地理」も、有隣堂の「地理フェア」で紹介されていたものです。 「人種と民族のちがいとは?」「気候区分は何に基づいているか?」「日本の食料自給率が低く見えるのは?」といった雑学的なことがサラサラ~っと書かれています。言うなれば、「1週間で完成、地理の基礎」+「朝日小学生新聞」を合わせた感じです。とはいえ、内容が別に子供向けとかいうわけではないので(ただ深くもない)クイズ系番組を楽しむには良いと思います。 著者は東進ハイスクールの地理講師だけあって、重要(と筆者が思う)箇所が緑色で書かれていて、まさしく参考書。云十年前なのに受験生のごとく、どうしてもハイライト箇所だけに目が行
2021年8月1日
第21回 Economic Cycleってなんだろう?(その1)
第21回 Economic Cycle(景気サイクル)ってなんだろう?(その1) 全米経済研究所(NBER)は7月19日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う景気後退は2020年4月が「谷」となり、今回の後退局面は2カ月と過去最短になったと発表しました。ここ2年ほど「Ecnomic Cycle」という言葉が頻出しましたが、果たして景気サイクルとは何でしょうか? アメリカの景気サイクルを決める(ここからが景気拡大期とか、ここからが景気後退期とか)のは経済データを収集している政府機関ではなく、このThe National Bureau of Economic Research(全米経済研究所=NBER)という民間の研究機関です。その中にあるBusiness Cycle Dating Committee(景気循環日付判定委員会)が、いつから景気拡大期に入ったとか、ここまでが景気拡大だった、とか判定します。この委員会は景気サイクルをretrospective(遡及的)に、つまり、景気転換点の確定を完全に判定できるようになってから後付けで「景気のピークはここ
2021年7月20日


2021年6月
2021年6月 「経済指標 読み方のルール」 1. 「経済指標 読み方のルール」 かんき出版 サイモン・コンスタブル/ロバート・E・ライト 著 上野泰也 監訳 高橋璃子 訳 私の業務の半分は、投資銀行やヘッジファンド等が顧客向けに発信しているレポートの日英翻訳です。そうしたレポートの中には毎月さまざまな経済指標が登場するのですが、その経済指標を包括的に説明した本がないなぁと思っていたところに、このタイトルが目につきアマゾンでポチリ。 この本は、個人支出、政府支出、インフレなどの分野に分けて50の経済指標を取り上げています。ただし、1つ1つの経済指標について深く説明するというよりも、例えば「耐久財受注は先行指標であり、耐久財受注が増える局面では企業に対する信頼感が高まっている」のような単純な説明に終始しており、この書籍の目的は、経済指標のインプリケーションを丁寧に説明するのではなく、「この指標が上昇している時は株の買い場だ」といういかに投資に役立つかを重視しているようです。 米国の経済指標に多少の知識のある方であれば、インターネットでデータ提供先
2021年7月1日
第20回 Underrepresented (ポジションが小さい、アンダーウェイト)
第20回 Underrepresented (ポジションが小さい、アンダーウェイト) 新型コロナは経済や社会に大きな変化をもたらしました。環境や社会的格差への注目がに高まり、金融市場でもESGを考えない投資はバカだ、と言わんばかり(たぶん言ってるのだと思いますが・・・・)の状況に一気に傾いています。 金融市場では2006年に国連責任投資原則(Principles for Responsible Investment, PRI)が提唱され、この原則に賛同する企業(資産運用会社、アセットオーナー等)が国連PRIに署名しています。現在、署名企業は3000社超、資産運用額(AUM)は100兆ドルを超えています。 そのように金融市場もESGへの傾斜を進める中で、投資対象としてunderrepresented な企業を重点的にピックするという投資が増えています。 Softbank created the Opportunity Fund barely a week after the murder of George Floyd. The firm comm
2021年6月9日


2021年5月
2021年5月 「会計×戦略思考」 1. 「会計×戦略思考」 日本経済新聞出版 大津広一 著 今月の朝読書を探していたら日経新聞の下の方にどどーんと広告が出ており、ついつい密林でぽちり。 正直を言えば会計関連の本はかなりあるので、そこに蔵書として1冊追加するのはいかがなものかと考えなかったわけではないのですが、わかりやすく、内容も盛りだくさんでした。 特にユニークなところは、タイトルにある通り(「会計×戦略思考」)会計や財務諸表の読み方に終始していない点です。財務諸表に関する基本的な知識はあることを前提として、「どう読むか」ということに徹底している点が非常に面白い。特に仮説を立てて、それを財務諸表を読みながら検証していくというプロセスは会社の財務諸表という静的な側面だけでなく、事業戦略や経営方針などの動的な側面も捉えるのに大変有効です。 後半はMBAのケーススタディの簡易版を書面で再現しており、こちらも読みやすくわかりやすいものの非常に内容は濃いです。IR関連の翻訳や通訳で特定の会社と関わる場合に、このような視点で事前に会社の財務諸表を読んでおく
2021年6月1日
第19回 Parking lot (一時保留)
第19回 Parking lot (一時保留) 金融翻訳にもいろいろと種類がございまして、私の場合は投資関係のレポート、ファンドのデューデリジェンス、ピッチブック等証券関係のものが4割近くを占めます。この手の案件は「いま」の市場がわかるのでとても面白いのですが、相場動向に左右されるのが最大の問題点。ボラティリティが上がると死にそうになるし、逆にボックス相場入りしたり、大暴落 で金融機関が死にそうになるとこちらも共倒れになります。 一方、IR翻訳(法定開示資料、中期経営計画、アニュアルレポート等)はボリュームはありますが、季節性の強い肉体労働者の様相が強く、収穫期が終わるとしばらく閑古鳥が鳴きます。 そういう中で、年間を通じて安定的にやってくる(そして納期が長い)会計ものはスタビライザーとして非常にありがたい案件です。 さて、今日の用語はその会計絡みの戦略系文章で出会った言葉。新聞等で使われるような用語ではないので、よく見かけることは無いと思います。 ディスカッションなどの間にちょっと本筋とは関係ない問題などについて Please leave th
2021年5月28日
第18回 double down(倍がけする、強化する)
第18回 Double down(倍がけする、強化する) 金融関係の記事には数字がつきものです。特に一昨年からのジェットコースター相場の中で、株価が2倍、3倍になったものも多く、最近景気の良い単語をよく目にします。 このdouble downもなんだかとても勢いのいい言葉です。直訳すれば「倍がけする」「リスクを取って一か八かの賭けにでる」ということですが、単に「強化する」というような意味でも使われています。 前者の例がこちら。 The Treasury market’s inflation bulls seem to have gotten a green light from Federal Reserve Chair Jerome Powell to double down on wagers that price pressures will only intensify in the months ahead. https://www.bloomberg.com/news/articles/2021-05-01/bond-market-
2021年5月6日


2021年4月
2021年4月 「資本主義の再構築」 1. 「資本主義の再構築ー構成で持続可能な世界をどう実現するか―」 日本経済新聞出版 レベッカ・ヘンダーソン 著 高遠 裕子 訳 およそ30年ほど前、資本主義そして株主中心主義がバブルをもたらし、世界中が狂乱に湧き上がっていました。そして今、環境破壊、不平等など資本主義に走った末に様々な問題がのしかかり、経済的に疲弊しつつあります。著者はハーバード大学マッカーサー・ユニバーシティのプロフェッサーで、過去15年間にわたり環境問題や社会問題の解決に取り組む企業と共に活動し、その成果や考察を本書にまとめています。 様々な問題に取り組み、それを解決しようとするには「Purpose(存在意義)」主導で、互いに尊厳と敬意を払い活動することが重要だと説く姿勢は、昨今の経済学者たちも同意するところで、株主のみならずさまざまなステークホルダーを含む社会の構築が目指す姿だとしています。 では、具体的に何をしたらよいか?著者や最終章で、変化を起こす6つのステップとして、 1.自分自身の目的・存在意義(パーパス)を発見する 2.今
2021年5月1日
第17回 High-frequency data(高頻度データ、オルタナティブ・データ)
第17回 High-frequency data(高頻度データ、オルタナティブ・データ) 大半の先進国ではワクチン接種が進み、徐々に経済活動の制限が緩和に向かっているように見えます。すでにイスラエルなどではマスクなしでレストランやコンサートに出かけるなど、コロナ前の生活に戻りつつあるようです。 一方で、東京には3度目の緊急事態宣言が発令されました。ワクチン接種が進まない中では爆発的な感染拡大と医療崩壊を阻止するために人流を止めるという単純施策しかないというのはなんとも情けない限りです。 さて、そんな中で久しぶりに目にしたこのhigh-frequency data。数年前からちらほら見るようになりましたが、コロナ禍で一気に注目が上がってきているようです。 Alternative data suggest global economic activity continued its recovery in March and early April, according to Bloomberg Economics’ gauges that in
2021年4月25日
第16回 Clip (~のペースで)
第16回 Clip (~のペースで) 新型コロナの第2波だの第3波だのに振り回されているうちに、気が付けばすっかり1年の4分の1が終わっているではないですか!? 本当に時が経つのは早いです。 本日のテーマはその速さを表す言葉、clip。経済では絶対値よりも変化率とその趨勢(trend)を重視する傾向にあるため速さを表現する文章は頻繁に出てきます。 The Federal Reserve expects the U.S. economy to grow at the fastest clip in four decades, forecasting 6.5% GDP growth this year; Goldman Sachs predicts 8% GDP growth. < https://www.bloomberg.com/news/articles/2021-03-31/biden-s-infrastructure-boom-risks-worsening-his-immigration-problem > 足元の米国経済の強さに関する
2021年4月5日


2021年3月
2021年3月 「地図で読むアメリカ」 1. 「地図で読むアメリカ」 朝日新聞出版 ジェームス・M・バーダマン 著 森本豊富 訳 本書はアメリカを10地域(ニューイングランド地域、メトロポリタン・ニューヨーク地域、アパラチア地域、サウス地域、インダストリアル・ノース地域、ハートランド地域、アウトウェスト&アラスカ地域、パシフィック・ノースウェスト地域、サウスウェスト地域、ハワイ地域)に分けて、それぞれの歴史や生活、宗教、経済状況などを簡潔に説明しています。その成り立ちや民族、宗教、それが今の経済情勢にどう影響しているかなどということが非常に分かりやすく説明されています。 大統領選の時は、「ラストベルト」や「福音派」など耳にしましたが、その時期がすぎるとあまりアメリカのまだ模様に焦点が当たる機会は多くないので、1冊手元に置いておくと便利かもしれません。アメリカの中学生向け社会の教科書みたいな感じだと勝手に思っています(アメリカの中学生向けの社会の教科書見たことないので・・・・)。高校、大学向けテキストではないところが★一つ欠けた理由。 ★★★★☆
2021年4月1日
第15回 Baked into (織り込み済み)
第15回 Baked into (織り込み済み) 証券会社出身の(特に株式市場に関わっていた)方と話すと、何かと証券ジャーゴンが出てくることがあります。この「織り込み済み」は厳密に言えば証券用語というわけではありませんが、何かとよく見かける言葉です。もちろん普通の会話でもしょっちゅう使われます。「〇〇の件は織り込み済み」とか、「その件はもう織り込まれてるから」とか、耳にしますよね。 余談ですが、他にも証券会社あるある用語として「マル」という言葉があります。何か予定していたことをキャンセルするときは「あの件はマルにしておいて」と言います。数字のゼロから来ているようです。 さて、「織り込み済み」に戻りますが、株式において「織り込み済み」とは「株価に影響のある材料が投資家の間で周知され、株価がすでにその影響を受けてしまっている状態」を指します。 https://www.smbcnikko.co.jp/terms/japan/o/J0824.html つまり英語ではfully reflected とか fully priced なんて表現することができま
2021年3月4日


2021年2月
2021年2月 「エクストリーム・エコノミー」 1. 「エクストリーム・エコノミー」 ハーパー・コリンズ・ジャパン リチャード・ディヴィス 著 依田光江 訳 FTとマッキンゼーが選ぶ2019年のベスト・ビジネス書にノミネートされた一冊。経済学が長年答えを出せなかった問題や見逃してきた泥臭い人間的な側面を、津波の被害を受けたインドネシアのアチェや難民キャンプ、刑務所などの「極限経済」の中に見いだしています。 人間は極限状態に置かれるとレジリエンスを発揮します。戦後の日本はまさにこうしたエクストリームな状況からの奇跡の復興だったわけです。戦後75年も経って極限状態が解消されたいま日本はどうでしょうか。ここ数年、人が主体的に使命感をもって活動する社会を形成することで、いかにレジリエンスで豊かな経済を作るかということが経済学のテーマとなってきました。おりしも東日本大震災から10年の節目を迎えますが、あのエクストリームな状況を東北や日本はうまく生かすことができたでしょうか。切れの良い訳も推奨。 ★★★★★ 「カンマの女王」 2.「カンマの女王」 柏書
2021年3月1日


2025年11/12月
2025年11/12月 1.「資本コスト経営のすすめ」 野口真人 著 日本経済新聞出版 東証のPBR引上げ要請(正確に言うと、そんな名前で要請を出したわけではありません) から早3年。当初は自社株買いや増配といった財務レバレッジの引き上げ策ばかりが行われていましたが、最近は、抜本的な事業改革に踏み出す企業が増えてきました。IR界隈にいると「資本コストの引き下げ」という言葉はちょっと聞き飽きた感があります。そんな中で今年4月に出た本書。著者はファイナンスをこれでもかというくらいわかりやすく説明する名手の野口真人さん。ということでこの本の薄さでどこまでわかりやすく書いているのか気になって買ってみました。 本書は資本コストとは無縁の経営者・経営企画部を対象に、具体的な開示上の改善案まで提起することを目指したものですが、さすがにちょっと駆け足すぎる感じを受けました。たしかにわかりやすいのですが逆に丁寧さに欠けるというか、対象読者の知識レベルを初級に設定した割には不親切なような気がします。前半の知識編だけでも一冊分の本にした方がよかったような・・・


2025年10月
2025年10月 「パンチラインの言語学」 1.「パンチラインの言語学」川添愛 著 朝日新聞出版 言語学者、川添愛さんの新著。タイトルからして絶対「バーリトードゥ」系だろうと推察したので、最近地域図書館に追加された「LINEで買ってほしい本のリクエスト」機能を使って申請してみました。するとあっという間に図書館が購入してくれたので予約一番、新品本を読むことができました。地方税を払っているかいを感じた瞬間です。ふるさと納税で地方の産物をもらうばかりが税金の使い道ではないなぁとつくづく感じました。 さて、パンチラインとは、いわゆる名セリフを指すらしいです。名セリフと言われても、どうも著者と指向が違うらしく、取り上げられたパンチラインの半分くらいしか知らなかったわけですが、それはさておき軽い読み物としてはやはりおもしろい。「めざせ、かっちゃん、甲子園」が七五調でゴロが良いとか、末尾につく「よ」を考察してみたりだとか、普段はあまり気にしていない点を掘り下げているところにオタク感がちりばめられています。翻訳などというオタク域の仕事をしている人間には(私のオ


2025年9月
2025年9月 「論理的思考とは何か」 1. 「論理的思考とは何か」 渡邊雅子著 岩波新書 英文を書くことを生業にしている者は、ロジカルシンキングに基づいて文章を書くことが至上命題とされています。ライティングの講座では必ず、主張ー本論ー結論といった構造を取ること、パラグラフごとにその型を踏襲することを嫌と言うほどやらされます。しかし、この型は米国を中心とした経済効率性の達成を目的としたレトリック(人を説得する技術)に基づいており、アングロサクソン系のライティングが中心の世界でのみ、これが唯一無二のレトリックだと思われているに過ぎないらしいのです(知らなかった!)。 応用言語学者のカプランによれば、読み手が「論理的である」と感じるには統一性と一貫性が必要であり、「読み手」がそう感じるかどうかはその文化や社会の中で馴染んだパターンに落とし込む必要があるそうです。 筆者はそのパターンをアングロサクソン系のエッセイ、フランス系のディセウタシオン、イラン系のエンシャ―、日本系の感想文の4つに分けて説明しています。論理的思考が目的に応じて形を変えて存在す
COLUMN
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