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第30回 toppish(上値の目途・節目、抵抗線)
今年は異常に早い梅雨入りだった関東地方ですが、気がつけばいつのまにやら梅雨明けの様相です。
米連邦準備理事会(FRB)も当初はインフレは一時的との姿勢だったのですが、気がつけば超強硬なインフレファイターへと早変わり。人の心は変わりやすいものです(秋ではなく梅雨ですが・・・)。
さて、そんな中で最近よく目にするようになった言葉がsoftish landing(ソフティッシュ・ランディング)。これまでよく耳にしていたsoft landing(ソフトランディング)が「高成長を安定へ導く過程で、不況などを招かないように徐々に成長速度を低下させること。また、そのようなな経済政策。軟着陸」(出所:コトバンク)であるのに対して、多少の景気減速や資産価格の下落があっても、物価を抑える」という中央銀行の姿勢を示す言葉として注目されています。
日本語としては、ソフトランディングの訳が前から「軟着陸」で定着していることもあり、私はSoftish landingが原文に出てきた時は、ソフティッシュ・ランディングと表記の上、カッコ書きで上記のような訳注をつけて今は対応しています。言葉は生き物なので、今後ソフティッシュ・ランディングの表記が日本のメディア等でどう変わってくるかに注目しています。
こちらはウォールストリート・ジャーナル紙に掲載されていた6月のFOMC後のパウエル議長の記者会見のトランスクリプトです。
Do you still think a softish landing is possible? And how would you define that at this point, considering the revised projections for unemployment, GDP, inflation?
「パウエル議長は今もソフティッシュ・ランディング(多少の景気減速を犠牲にしてもインフレを抑えること)は可能だとお考えですか?また、失業率、国内総生産(GDP)、インフレ率の見通しの修正を踏まえ、現時点でこのソフティッシュ・ランディングはどういう経済状態と定義されますか?」(試訳)
ちなみにそれに対してパウエル議長は以下のように答えています。
MR. POWELL: So I think what’s in the SEP would certainly—would certainly meet that test. You know, if you see—you’re looking at getting that back down to almost 2% inflation by 2024 and the unemployment rate is still as low as 4.1%. That would be—I would call that as meeting that test.
非常に面白いやり取りですのでご興味があるかたは原文をご一読ください。
ところで、きょうの言葉はSofishではないのです。Toppishなのです。こちらは辞書を引いても出てこず、なかなか探すのに手こずりました。Softish, selfish, childish ・・・・何となくTop+sh何だろうなぁという感覚だけはわかるのですが、辞書にないというのは実に気持ちが悪いものです。でもウェブサイト上を検索すると結構出てくるんですね、このToppish。
https://www.cityindex.com/en-sg/news-and-analysis/sp-500-looks-toppish-below-21702180-677012015/
https://www.theedgemarkets.com/article/market-conditions-have-become-toppish-says-interpacific
どちらも相場の動向を表す場面で使われおり、「上値の目途・節目」「天井近辺」のような意味合いです。最初の文章のS&P looks toppish below 2170/2180. であれば「S&P500種株価指数は2170/2180が上値抵抗線のようだ」のように訳出しても良いと思います。
天井とか上値抵抗線とか、こちらも相場用語ですが、英語も相場用語が出てくるとわかりにくいですね。
(2022年6月27日)