今月の本
~毎朝5分*2~3冊をご紹介していきます~

毎朝20分ほど読書の時間を作っています。もともとは1冊の本を読み終わるまで別の本を読まないタイプでしたが、そんなことをしていたら、①読みたい本だけを優先する、②積読が増える、③ジャンルが偏る、という事態に陥ってしまいました。そこで子供たちが学校で行っているように「朝読書の時間」というものを設けて、毎日少しずつでも読み進めるようにしたところ、1カ月でだいたい4-5冊は読めることがわかりました。

 

朝読書のルール

① 15分(切り悪い時は5分以内であれば延長可)

② 13

③ ジャンルはすべて違うものを選ぶ

 

選書の基準としては自分の専門分野である経済、投資、会計等から1冊、英語・翻訳に関係するものを1冊、その他どの分野でも良いものを1冊、としています。

 

良かった本、自分の趣味に合わなかった本などいろいろありますが、1カ月で読んだ本をご紹介していこうと思います。

図解&ストーリー『資本コスト』入門」

1 図解&ストーリー『資本コスト』入門」 岡俊子 著 中央経済社

  HPやツイッターでも「IRコンサルティングやってます!(本日も頑張って営業中!)」みたいなことをちょくちょく書いておりますが、企業の方と話す時になかなかPL思考が抜けないなぁと感じるのがこの資本コストの話が出るときです。

 新しいガバナンスコード原則5-2では「自社の資本コストを的確に把握したうえで、~収益力・資本効率当に関する目標を掲示」せよと言っているので、「そりゃあもちろん、上場企業は資本コストをちゃんとはじいてるのよね」と思ったりしますが、さにあらず。そんなことは225銘柄の優良企業とか、意識高い系の会社であって、資本コストという概念を説明することすら難しいという場合もあります。

  ということで、しばらく資本コストの伝道師になろうかと思い、簡単に説明している本はないかなぁと思って出会ったのがこちらの本。難しい数字の話をほとんど出さずに資本コストの概念をうまく説明していると思います。いまさら資本コストって何?と聞けない人にお薦め。資本コストというと、圧倒的に数式が出てきてそれ自体アレルギーの方も多いと思う中で、最初の入門書としてよくまとまっていると思います。

 ただし居酒屋で3人の会話を基に進むという設定はちょっとしつこいか。この辺りはアマゾンの口コミコメントに同感します。ということで★4つ。

 

★★★★☆

 

 

企業価値向上のための資本コスト経営」

2.「企業価値向上のための資本コスト経営」 日本証券アナリスト協会 編 日本経済新聞出版

 

 上でも書きましたが、目下「資本コスト」月間。資本コストって結局はいまでもCAPMで導き出される株式に対する要求利回りと企業の調達金利から導き出すWACCが定番です。つまり、基本的には資本市場が決めるものです。それがコーポレートガバナンスコードで企業経営のモノサシにされたのだから、資本市場なんて上場した後はあんまり関係ない(IPO以降エクイティファイナンスをしていない企業は意外と多いらしい・・・)経営者にはたまらないのでしょう。そんな方々を対象に書かれた(と私は思っています)のがこの本。資本コストとは何ぞやから始まり、実際にアナリストサイドで行っている計算方法等を交えつつ、一番の読みごたえはやはり投資家とのエンゲージメントをケーススタディとして紹介している場面だと思います。

 

 面白い事業をやっていても、投資家になかなか理解されないとおっしゃる企業の皆さん。皆様は、投資家が話す言語を話していらっしゃるでしょうか?アナリストや投資家は基本的に企業「価値」をはじくために皆さんの企業の研究をしています。企業経営者のみなさまも投資家にもっと自社を理解してもらうために、投資家の言葉を理解する努力をする必要があるのかもしれません。東証再編から早半年。TOPIXのウェイト調整も始まります。果たしてこの荒波をすべての企業が乗り越えられるのか、しばし動向を見たいと思います。

 

 ということで、こちらの本については、数学的なところが嫌いな方はその辺を読み飛ばしつつ、資本コストを理解すると良いと思います。ただし、複数の執筆者がいるので人によって読みやすい・読みにくいにばらつきがある点はご容赦ください。

 

★★★★★

「最新版 論文の教室」

3.「最新版 論文の教室」 戸田山和久 著 NHK出版

 

 編集者の川月現大さんご推薦書。その昔、日本の小中校で論文やレポートの書き方を教えてくれないのに、大学に入ったとたんいきなりレポートを書けと要求され四苦八苦しました。最近は中高一貫校ではレポートの書き方を教える学校も増えてきているようですが、それでも小学校の授業は「読書感想文」「作文」「起承転結」の一辺倒。槍と楯のお授業を受けてきた子どもたちが海外に行って、ジャベリンを使いこなす最先端の生徒と戦うのはあまりに気の毒です。一方、英語の論文教育はどうかと言えば、1年だけ留学に行ったシアトルでも、翻訳の勉強をしようと思ってなぜかライティングのコースを取ってしまった国際研修室でも、英語で文章を書くときはThesis Supportingを中心とするフレームワークを徹底して教えてくれました。

 考えて見れば、Thesisを出してからSupportingという英語の文章構造自体、まず旧情報を出して、その後新情報を記述するという英文法と同じ。英語脳のストラクチャーなのでしょうか。

 

 さて本論に戻り、こちらの本は論文の書き方を軽快な語り口で順序だてて教えてくれる、まさに論文書きの参考書。ああこんな本があれば私の卒論ももうちょっとましだったのに・・・と30年前の話をしても仕方がない。問題もついている実践的な書ですが、自分が論文を書くときに横に置きながらストラクチャーに沿って構築できているかどうか確認する参考書のように使うと良いと思います。

 余談ですが、高校生の長男の友人が小学生の妹の夏休みの読書感想文の宿題を請け負い、パターンをいくつか変えてメルカリで売ったところ結構なバイト代になったそうです。読書感想文を書くのは子どもも苦痛らしい。要約ならまだしも、感想を書くだけの課題を何十年も続けているのは何が目的なのか、一度文科省の偉い人に聞いてみたいものです。 

★★★★★

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