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第8回 hands on/hands-on
“If there was going to be a buyout for this Y12trn market cap name, surely he would need as much leverage as he can get his hands on.”
25日の報道で、孫正義氏が金融機関に対して担保に供している株式が減少したことが判明しました。個人で保有するソフトバンクグループの株式を担保に、金融機関から資金を借りていたわけですが、個人資産の売却も少し落ち着いたとみられます。
上記はこの状況に対するあるアナリストのコメントです。ソフトバンクがMBOで非上場化するのではないかという噂が出ていることに対して、「時価総額が12兆円の企業を買収しようとするならば、借り入れられるだけの資金を借りなきゃいけないから、たぶんMBOはないだろう」という趣旨の話になります。
この文脈でのget hands onは文字通り「手を入れる」「自分のものにできる」資金となります。一方でhands-onとハイフンがつくと、「実地の」とか「現場の」という意味になり、hands-on training であれば「実地訓練」となります。
M&Aの現場ではhands-on investment/その反対のhands-off investmentをよく耳にします。M&Aなどでプライベート・エクイティ・ファンドやベンチャー・キャピタルが自分たちの役員を投資先企業に送り込んで、企業の取締役や事業の重要なポストに就任させて、その企業の経営にがっつりかかわる形式を指します。
通常そのまま「ハンズオン投資」「ハンズオフ投資」と訳出されています。このハンズオン投資ですが、既存の経営陣との対立もあり、うまくいかない場合も多々あります。
余談ですが、孫さんから株担保(マージン・ローンと言われます)で融資を行った金融機関は、その株をどうするかといえば、ショートセラー(空売り)筋に貸し株をします。つまり株の保有者は自分の株を貸し出した結果、空売りされる可能性が高まることになります。
その昔ある金融機関に対して、その銀行が持っている上場株式を証券会社に貸し出して貸し株料を稼ぎませんか?と提案したことがあります。その時に「それ、うちの株を借りた人は空売りするわけでしょ?保有株の損が出るから嫌です」と言われました。
確かに空売りという現象だけを捉えれば株価下落要因なのですが、売る人がいれば買う人もいるわけで、逆に言えば、売る人がいないと買う人は買えないわけです。また、空売りは必ず返さなければならない、つまり必ず買い戻しがいつか起こるため、売りっぱなしではありません。結局のところ貸し株に回る株数が増えることにより流動性が向上するという面では企業にとってデメリットにはならないわけです。
(試訳)時価総額が12兆円の企業を買収するとなれば、借りれるだけの金を借りなければならないことは間違いないだろう。
(2020年9月29日)