今月の本
~毎朝5分*2~3冊をご紹介していきます~

毎朝20分ほど読書の時間を作っています。もともとは1冊の本を読み終わるまで別の本を読まないタイプでしたが、そんなことをしていたら、①読みたい本だけを優先する、②積読が増える、③ジャンルが偏る、という事態に陥ってしまいました。そこで子供たちが学校で行っているように「朝読書の時間」というものを設けて、毎日少しずつでも読み進めるようにしたところ、1カ月でだいたい2-3冊は読めることがわかりました。

 

朝読書のルール

① 15分(切り悪い時は5分以内であれば延長可)

② 1日2-3

③ ジャンルはすべて違うものを選ぶ

 

選書の基準としてはざっくり、自分の専門分野である経済、投資、会計等から1冊、英語・翻訳に関係するものを1冊、その他どの分野でも良いものを1冊、としています。

 

良かった本、自分の趣味に合わなかった本などいろいろありますが、1カ月で読んだ本をご紹介していこうと思います。

  「物価を考える:デフレの謎、インフレの謎」

 

1. 「物価を考える:デフレの謎、インフレの謎」 渡辺努 著 日本経済新聞出版

 

 物価研究の第一人者、東大の渡辺努先生の最新著書。TVでの語り口も、書籍の書きぶりも、これだけ分かりやすく伝えられる経済学者として、彼の右に出るものはいないのではないかといつも感心します。

 私がマクロ経済学を授業でとっていたそれこそ何十年前は、需要・供給曲線といった理論が中心でした。しかし、日本がデフレに陥り、その間の政策を語るうえで、正直こうした昔の理論が役立つことはほとんどなかったのではないかと思います。そもそも消費者や企業の期待(expectation)が頻繁に教科書に登場した覚えはありません。物価が上がると需要が減少し、供給がそれに合わせて減少する・・・お馴染みのロジックですが、そもそも消費者が「物価が上がる」と予想し、企業が「賃金を上げる」と予想しなければこの論理自体成り立たちません。日本では30年にわたりこのスパイラルが分断されていました。

 最近のデフレやインフレの話がなかなか腑に落ちなかったのは、金融政策が本質的に「期待」を基調としたものに変わってきているのに、大元の知識のアップデートがされていなかったからだとつくづく感じます。マエストロと呼ばれたグリーンスパンFRB議長は、デフレの怖さについて「物価下落自体はさほどの問題ではない。なにが問題かと言うと、デフレが企業の価格支配力を奪い、それが原因でアメリカ経済の活力がそがれることだ、と」(P307)語っています。価格の変動ではなく景気が大事、これが本質です。

 翻って、関税という手段で人為的にインフレをもたらす場合、米国企業の価格支配力は向上するのでしょうか?関税が嫌ならば米国に投資せよ、米国国内で物を作って売ればいい、ということであれば、世界各国の消費者はどうなるのでしょうか?

 物価と賃金がようやく動き出した日本。人為的な物価上昇を作り出す米国。いま絶対に読んでおきたい一冊。

 ★★★★★

 

「住宅ローンで絶対に損したくない人が読む本」 

2. 「住宅ローンで絶対に損したくない人が読む本」 千日太郎 日本実業出版社

 

 J-FLEC講師をしていると、ときどき得意でない分野の講演依頼が来ます。お金との付き合い方には、「使う」「稼ぐ」「貯める」「借りる」などさまざまな形がありますが、私はこの「借りる」という方面にはめっぽう弱いのです。恐らくこれは、多くの人と同じように「借金=悪」というマインドセットが埋め込まれているからだと思います。ただ、すべての借金が悪というわけではありません。こんなポンコツではいけないと思い、金利が上昇して注目が集まっている住宅ローンについてちょっと勉強しようと思って借りてみました。

 ポンコツとはいえ、市場金利などの部分などは一般的な話なのですっ飛ばしながら読んでいきましたが、住宅ローンの仕組みって結構複雑なことにびっくり。住宅ローンを借りたことがない人間には「金利の引き下げ幅」についての誤解や、「5年ルール」「125%ルール」など結構新鮮な学びがありました。百聞は一見にしかず。50代でも借りられるというので、借りてみようか思案中(借りてどうする?!)

★★★★☆

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