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第15回 Baked into (織り込み済み)
証券会社出身の(特に株式市場に関わっていた)方と話すと、何かと証券ジャーゴンが出てくることがあります。この「織り込み済み」は厳密に言えば証券用語というわけではありませんが、何かとよく見かける言葉です。もちろん普通の会話でもしょっちゅう使われます。「〇〇の件は織り込み済み」とか、「その件はもう織り込まれてるから」とか、耳にしますよね。
余談ですが、他にも証券会社あるある用語として「マル」という言葉があります。何か予定していたことをキャンセルするときは「あの件はマルにしておいて」と言います。数字のゼロから来ているようです。
さて、「織り込み済み」に戻りますが、株式において「織り込み済み」とは「株価に影響のある材料が投資家の間で周知され、株価がすでにその影響を受けてしまっている状態」を指します。
https://www.smbcnikko.co.jp/terms/japan/o/J0824.html
つまり英語ではfully reflected とか fully priced なんて表現することができます。
それ以外にも金融レポートでよく見かける表記としてはfactor と discountなどがありますが、時々baked into(in)という表記にもお目にかかることがあります。
But it was interesting that neither currency nor bond markets reacted strongly to the comments, even though on their face they suggest a radical change of direction for U.S. fiscal policy.The reflation trade is well baked in, aided by the vaccine.
就任前のイエレン財務長官の発言に対する市場の反応を描写した箇所です。経済を支えるための財政政策を肯定し、米ドルへの介入を否定するイエレン発言に対するコメントで、その理由として、the reflation trade is well baked inと続けています。財政出動により米国債務が増加し、それに伴い米ドルが売られる可能性があるのにもかかわらず、市場が反応しないのは「リフレトレードが十分に織り込まれているからだ」といっているのです。
リフレトレードとは金融緩和策の長期化により経済が浮揚することに賭ける取引で、昨今の豪ドル高や米国の株高もリフレトレードの一環と言えます。まさにリフレトレードが金利差などの経済理論よりも優勢ないまの相場。果たしていつまでつづくのか神のみぞ知るですね。
2021年3月4日