運営:有限会社ピィファ・パートナーズ
毎朝20分ほど読書の時間を作っています。もともとは1冊の本を読み終わるまで別の本を読まないタイプでしたが、そんなことをしていたら、①読みたい本だけを優先する、②積読が増える、③ジャンルが偏る、という事態に陥ってしまいました。そこで子供たちが学校で行っているように「朝読書の時間」というものを設けて、毎日少しずつでも読み進めるようにしたところ、1カ月でだいたい2-3冊は読めることがわかりました。
朝読書のルール
① 1冊5分(切り悪い時は5分以内であれば延長可)
② 1日2-3冊
③ ジャンルはすべて違うものを選ぶ
選書の基準としてはざっくり、自分の専門分野である経済、投資、会計等から1冊、英語・翻訳に関係するものを1冊、その他どの分野でも良いものを1冊、としています。
良かった本、自分の趣味に合わなかった本などいろいろありますが、1カ月で読んだ本をご紹介していこうと思います。
1.「日本国債入門」 服部孝洋 著 一般社団法人金融財政事情研究所
その昔、新入社員で証券会社に入った頃。配属先の先輩からもらった本がありました。その本は、大和証券の債券部門に配属されると新人がもらえるらしいのですが、なぜかどこの証券会社の人もそれを持っていました。確か「債券の基礎知識」とかいうタイトルの黒い本でした。
その本の何がすごいかと言えば、債券市場の概要だけでなく、実務に必要な基礎知識が全部網羅されていたことです。トレーダーやお客様とのやり取りに必要なBPV(ベーシス・ポイント・バリュー)の意味やチーペストの計算方法から、決済の実務にいたるまで、およそ日本国債に必要な知識はページをめくれば探すことができました。それも数年に1度は改定されるのです。
それから云十年経って、国債の売買をすることもお客様への取次ぎをすることもない今、この手の本を必要とするわけではありません。ですが、この「日本国債入門」を書店で手に取った時は、もう手元にない大和証券のかの本の代わりになる、とちょっと嬉しくなりました。
はっきり言って国債のトレーディングとか決済実務に従事する人以外は知らなくてもいいこともかなり多いのです。しかし、日本国債についてまとまって書いてある本って非常に少ないので、金融翻訳者なら一冊手元に置いても良いかと思います。久しぶりに金利が復活した日本に注目が集まっている最中、レポートの翻訳などで困ったときには結構役に立つかもしれませんよ。
マニアックで汎用性が狭いため★3つ。
★★★☆☆
2. 「戦略の要諦」リチャード・P・ルメルト 著 村井章子 訳
この本の帯がなにせ刺激的なんです。「ミッションパーパスは無意味である。願望や理想を戦略にするな。克服可能な最重要ポイントを見極め、解決を考え抜け」ですよ。このミッションパーパス百花繚乱の時代に喧嘩売ってるのかしら?と思って買った本。
この本を読んだ後の感想としては、ミッションパーパスが無意味というよりは、世の中で作られている「中期経営計画」という名の大半は計画でも戦略でもないのではないか、ということ。大半の「中期経営計画」には2025年までに売上高〇%増、利益率〇%改善、昨今ではROE〇%というわかりやすい数値目標がばばーんと2枚目辺りに書かれていて、それを達成するための「戦略または施策」なるものがそのあとツラツラと続きます。しかし、著者は自分の望む業績目標から戦略を逆算しても、そういう目標は実現方法を語ってくれるわけではないからまずうまくいかない、と一刀両断に切り捨てます。
良い企業とは、継続的に資本コストを上回る利益を上げ企業価値を向上させる企業ですが、足元の業績は過去の投資や行動がもたらした収穫であり、現在の利益は企業価値を決定づける要因ではありません。しかしいまだに四半期決算のような短期的な業績開示に企業が振り回される状況にも著者は懸念を示しています。
実のところ、決算で「これくらいの数字にしよう」というような、恣意的な業績にしている企業はいくつも耳にします。東証に上場する4000社近くの企業のうち、すぐれた戦略を立て、実行し、企業利益に結びつけている企業がどのくらいあるのか、見極める力をつけたいものです。
★★★★☆