運営:有限会社ピィファ・パートナーズ
毎朝20分ほど読書の時間を作っています。もともとは1冊の本を読み終わるまで別の本を読まないタイプでしたが、そんなことをしていたら、①読みたい本だけを優先する、②積読が増える、③ジャンルが偏る、という事態に陥ってしまいました。そこで子供たちが学校で行っているように「朝読書の時間」というものを設けて、毎日少しずつでも読み進めるようにしたところ、1カ月でだいたい4-5冊は読めることがわかりました。
朝読書のルール
① 1冊5分(切り悪い時は5分以内であれば延長可)
② 1日3冊
③ ジャンルはすべて違うものを選ぶ
選書の基準としては自分の専門分野である経済、投資、会計等から1冊、英語・翻訳に関係するものを1冊、その他どの分野でも良いものを1冊、としています。
良かった本、自分の趣味に合わなかった本などいろいろありますが、1カ月で読んだ本をご紹介していこうと思います。
1 「投資家と経営者をつなぐ実践的IR戦略~自社の時価総額を引き上げる全シナリオ~」 飯塚洋一 著 ダイヤモンド社
今年4月の東証市場改革により、東証上場企業はプライム、スタンダード、グロースの3つに分けられました。プライム企業の中には基準を満たしていない「なんちゃって」プライムも300社近くあり、今回の改革が東証が本当に目指す「日本企業の企業価値を向上させる後押し」になるかどうかはいささか疑問です。
とはいえ、試験前1週間にならないと勉強し始めない我が家の子供と同じく、人間切羽詰まらないとやらないというのも事実。やれ浮動株比率が35%以上じゃなきゃだめ、とか、TCFDに準拠した開示をしないとだめ、だとか外堀を埋められて初めて「これはまずいのでは?」とIRに本腰を入れ始めた企業も多いように思います。
さて、こちらの本は2014年初版とやや古いですが、IRの目的やエッセンスといったものがわかりやすく実体験として書かれています。内容はいたってスタンダードで当たり前と言えば当たり前なのですが、実のところこの「当たり前」を理解せず株価対策としてIRを行っている企業も多いことも事実。そもそもIRの目的とは、企業のパーパスに共感した投資家から資金を付託してもらい、その資金を活用して企業価値を高め、そのリターンを投資家に返し、良い時も悪い時も投資家とのコミュニケーションを積極的に取りつつ、必要なときに再び投資してもらうこと、これに尽きると思います。
投資家サイドの読者にとっては新情報が多い本ではありませんが、資本市場に疎い企業IR担当者には一読をお勧めします。世の中にIRを実践された方が書いた書物はさほど多くないこともあり、希少価値から★多め。
★★★★☆
2.「コーポレートガバナンスの進化」 松田千恵子 著 日経BP
上述のように東証改革が着々と進んでおり、コーポレートガバナンスコードも新しいものが発表されています。こちらの著書はコーポレートガバナンスがご専門の都立大の松田先生による改訂ガバナンスコードの入門書です。今回の改訂のポイントはこうですよ~と右往左往している中小企業の皆さんにサラっとエッセンスを説明する意図で書かれたような気がします。
そのスタンスが悪いわけではありませんが、今の東証上場企業は、このように改訂コーポレートガバナンスを受けて資金も人材も不足してどうしようか頭を悩ませている企業と、ガバナンスコード改訂に先んじて手を打っている企業との差が著しく広がっていることの証拠なのだと思います。
基本的に日本人は優しいので、「振り落とす」よりは「みんな一緒に頑張ろう」というスタンスなのでしょう。みんな一緒にガバナンス改善しようね、そのためにガバナンスコード改訂することになったから、頑張ってついてきてね、という感じ。でもそれなら、ついてこれない平均的な子どもに、補講なり特別授業なりサポートを手厚くしてあげたら良いと思うんですが、その辺意外と冷たい・・・。
今回の東証改革で海外市場との時価総額格差が縮まるとは全く思えませんが、このまま良い日本企業も一緒に地盤沈下していくのはなんとか避けたい・・・言葉の面からそうしたお手伝いをしたいと思う今日この頃です。
★★★☆☆