運営:有限会社ピィファ・パートナーズ
毎朝20分ほど読書の時間を作っています。もともとは1冊の本を読み終わるまで別の本を読まないタイプでしたが、そんなことをしていたら、①読みたい本だけを優先する、②積読が増える、③ジャンルが偏る、という事態に陥ってしまいました。そこで子供たちが学校で行っているように「朝読書の時間」というものを設けて、毎日少しずつでも読み進めるようにしたところ、1カ月でだいたい4-5冊は読めることがわかりました。
朝読書のルール
① 1冊5分(切り悪い時は5分以内であれば延長可)
② 1日3冊
③ ジャンルはすべて違うものを選ぶ
選書の基準としては自分の専門分野である経済、投資、会計等から1冊、英語・翻訳に関係するものを1冊、その他どの分野でも良いものを1冊、としています。
良かった本、自分の趣味に合わなかった本などいろいろありますが、1カ月で読んだ本をご紹介していこうと思います。
.「世界インフレの謎」 渡辺努 講談社現代新書
1年のうちでいわゆる「ニッパチ(2月/8月)」は企業が最も暇だと言われておりますが、ことボッチ企業の私目には会社の決算と確定申告と言う二大難敵が構えているのがこの時期。自然と読書の時間も削られてしまい、昨年同様2カ月分のご紹介となってしまいました。
さて、今月は東大の渡辺努先生の著書。昨今話題のインフレについて、巷ではロシアによるウクライナ侵攻やコロナ後の供給制約がその要因だというような言われ方もしているが、さにあらず。基本は人々の行動変容が原因だと説いています。この点については各投資銀行のレポートなどでも書かれており、実はさほど目新しい視点ではないのですが、コロナが一服し、インフレが加速し、今度はいつ景気後退に陥り金利が転換するかに注目が集まる今、全体像を捉え、振り返るのに有益な本です。
日本は30年にわたり賃金が凍結された状態にありますが、これを解凍するには供給サイドへの働きかけもやはり必要なのでしょう。そう考えると、自動車業界を皮切りに春闘で賃上げが続々発表されているなか、日本もいよいよ物価が動き出すのかもしれません。
余談ですが、この本を読んで初めて、expected inflation がなぜforwardではなくexpectedなのか腑に落ちた気がしました(すいません、今更で・・・・・)。2022年5月の本として翁邦雄さんの「人の心に働きかける経済政策」という本を紹介していますが、まさしく日銀はこの「期待値」に働きかけようとして政策を行ってきたんですね(成功したとはいえませんが)。折しも本日、新しい日銀総裁候補の植田さんが国会で話をしていますが、果たしてこのExpectedに日銀は今後どう働きかけるのか?
久しぶりに世界中から日本に目が注がれているいまこその2冊。
★★★★★
2.「ROIC経営 稼ぐ力の創造と戦略的対話」あずさ監査法人 編 日本経済新聞出版
昨今流行(いや、もう流行は過ぎたか)のROICについての本。なぜかこの後編の「実践編」という方から読んでしまったわたくし(2022年11月の本)。実践編はまさしくROICを企業の中でどう実際に使うかと言う点に主眼を置いているのに対して、こちらの本はそもそもROICがなぜ注目されたのか、ROEやEVなど他の収益指標と何が違うのか、というROICの「基本のき」から説明しています。特に、ところどころに出てくる「筆者が作成」した図が超わかりやすい。ときどきセミナーなどを担当させていただくと、「視覚的な理解の方が、文章的な理解よりも即効性がある」ということを身に沁みて感じます。
中小企業のIR資料などでも、やたら文章を書きまくっている会社が多いですが、基本的に人間が瞬時に理解できる文章は13文字と言われています。もっと視覚認知に訴えるIR資料を作成した方が良いですよね・・・。ちょっと横道にそれましたが、基本的な資本コスト等の概念に加えて、ROICとは何かを捉えるのには良い一冊です。紙面のわりにちょっとテーマが盛りだくさんな点が☆1つの理由。
★★★★☆