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第11回 Concession(コンセッション)
11月1週目から大統領選の行方が連日のようにメディアを賑わしてきましたが、大勢がやっと決まりました。郵便箱の盗難、投票所での威嚇、郵便投票は無効だとの主張等々、民主主義を声高に叫んできた世界最大の先進国のいささかお粗末な事情を世界にさらけ出した選挙が終わるというのは喜ばしいことです。しかしこの選挙、敗北宣言が聞かれないことには終わらないらしいのです。今日はその敗北宣言(Concession Speech)からConcessionを取り上げます。
ご存じの通りConcessionにはかなり幅広い意味があり、非常に訳しにくい言葉の1つです。ランダムハウスには1.譲歩、譲渡、承認、容認、2.譲歩されたもの、譲歩事項、譲与物、3.(英)割引、4.免許、特許、特権、5.営業許可 とありますが、前後関係で4と5がどちらにも取れたり、1と4の間で紛らわしかったり、訳者泣かせの単語です。
インフラファンドなどのピッチブックでは
Company A has signed a long-term concession with XXX government.
という表現をよく目にするわけですが、このconcessionが上記の4なのか5なのか?は前後関係から判断するしかないことが多いわけです。
一方、債券の発行に絡んでよく見かける表現は次のようなです。
(1)The concessions have climbed steadily in the past couple of weeks amid a combination of higher market volatility, a drop in corporate bond prices and an excess of supply of new bonds.
https://www.ft.com/content/6df8f86e-4a43-11e4-8de3-00144feab7de
これはランダムハウスの3に該当するもので、既発債に対して新発債が有利な発行条件で記載されることを指します。ただ、Most theaters offer concession to students and senior citizens. (たいていの映画館は学生と高齢者に割引(料金)を提供している(ウィズダム英和辞典)」なら「割引」でも良いのですが、同じFT記事にあるように、
(2)According to bankers’ estimates, investors are now asking companies to offer bonds with yields that are on average 12-15 basis points higher than where existing paper by the same company is trading in the secondary markets.
This is known as the “new issue concession”.
concessionとは、あくまでも「既発債」と比べて有利な利回りで発行することを指しており、この文脈では通常「コンセッション」という言葉を使用しています。
(試訳)
1.市場でのボラティリティ上昇、社債価格の下落および新発債の供給過剰が相まって、ここ数週間はコンセッションが着実に上昇している。
2.銀行関係者の予測では、同じ企業が発行する既発債に比べて、新発債には平均12~15ベーシス・ポイント(bp)高い利回りを要求している。これは「新発債コンセッション」として知られる。
(2020年11月14日)