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第19回 Parking lot (一時保留)
金融翻訳にもいろいろと種類がございまして、私の場合は投資関係のレポート、ファンドのデューデリジェンス、ピッチブック等証券関係のものが4割近くを占めます。この手の案件は「いま」の市場がわかるのでとても面白いのですが、相場動向に左右されるのが最大の問題点。ボラティリティが上がると死にそうになるし、逆にボックス相場入りしたり、大暴落で金融機関が死にそうになるとこちらも共倒れになります。
一方、IR翻訳(法定開示資料、中期経営計画、アニュアルレポート等)はボリュームはありますが、季節性の強い肉体労働者の様相が強く、収穫期が終わるとしばらく閑古鳥が鳴きます。
そういう中で、年間を通じて安定的にやってくる(そして納期が長い)会計ものはスタビライザーとして非常にありがたい案件です。
さて、今日の用語はその会計絡みの戦略系文章で出会った言葉。新聞等で使われるような用語ではないので、よく見かけることは無いと思います。
ディスカッションなどの間にちょっと本筋とは関係ない問題などについて
Please leave the issue at the parking lot and review it after the discussion.
というような表現が使われます。直訳すれば「その問題は駐車場に置いておいて、この議論が終わったら見直そう」ということ。文字通り「駐車場」と訳すと訳が分からなくなるので、翻訳の時には「棚上げして」「保留して」など適宜訳出をしております。
そういえば、「同時通訳者が「訳せなかった」英語フレーズ (イカロス出版 松下佳世 編著)のP22に「Park it!」というのがありますが、確かにインド人とかロシア人に「ペルキング・ローット!」のように発音されたらなかなか判別に苦しいかもしれません。つくづく翻訳でよかったと思います。
またBuilding blockという言葉も良く目にします。本当に駆け出しのころやはり会計戦略系ピッチブックの中でBuilding blockという言葉が出てきて、さてどうしたものかと思案した記憶があります。文字通り「積み木」のことで、building block of the accounting procedure during the audit のように使われており、「監査中における監査手続の基礎/基盤/構成要素」などと訳しわけていました。
辞書に載るような言葉ではないかもしれませんが、知っておくと便利です。
(2021年5月28日)