気になる言葉
~翻訳の中で出会った言葉~

第10回 Loophole(抜け穴)

前置きをしておきます。本日の話題はちょっとマニアックな話。

 

Major banks such as Wells Fargo would put greater focus to grow net income by purchasing MBS.

 

はて?なぜ大手銀行がMBSを買うことで純利益が上がるんだろうか?

 

私は常々、金融翻訳というものは答えを探すことができる分野だと思っています。文章の背景にある「事実」と、その結論を導き出した「理論」というものは、筆者独自が創造したものではなく、だいたいにおいて絶対的な事実と優れた個人の偉業に裏付けられているからです。

 

今回のこの文章。私の中では全くロジックが成り立たなかったので、その背景を調べるのにざっと23時間かかりました(証券化商品、あんまり詳しくないので・・・・)。するとMBSに詳しくない私には面白い記事に出くわしました。

 

Banks Uncover Loophole to Buy Home Loans at Below-Market Prices

 <https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-08-20/banks-poised-for-mortgage-bond-windfall-that-may-burn-investors?sref=2Kgwko1D>

 

タイトルからしてなんだかきな臭いですよね。Loophole(抜け道)ですよ。果たして大手銀行が時価を下回る価格で住宅ローンを買う抜け道とはどのようなものでしょうか?

 

新型コロナの感染拡大を受けて米国議会と大統領が大盤振る舞いの支援策を繰り出したことは周知の事実。その中に、住宅ローンの返済を1年間繰り延べることができるという対策が3月に議会を通過していました。

 

住宅ローンを抱える国民にとってはありがたいこの政策。しかしながら、住宅ローンの証券化商品であるMBSの投資家にとっては甚だ迷惑な制度だったようです。

 

住宅ローンの証券化商品(MBS)には、政府保証が付くエージェンシーMBSと保証のない非エージェンシーMBSがあります。このエージェンシーMBSの保証をしているGNMA(ジニーメイ)は、ジニーメイプール(ジニーメイが保証する住宅ローン)に対してとある規則を適用しています。それは「90日以上延滞しているMBSのローン債権を銀行や金融機関が額面で買い取ることができる」というもの。

 

元々このルールは、サービサーである金融機関の手を煩わせる延滞債権の処理を金融機関から解放することを目的として作られたものらしいのですが、いまの市場環境下では大半の住宅ローンはオーバーパー(額面を上回る)で取引されています。すなわち金融機関は、価格が額面以上で取引されている(議会が延滞を許した)住宅ローンを額面で合法的に買い取ることができるわけです。ちなみにこの買取行為はbuyoutと表記されることが多いようです。M&Aで使われるBuyout(買収)と本質的な意味合いは一緒です。

 

買い取った債権ですが、もちろん市場価格が額面以上なので、すぐに市場で売れば利ザヤが得られることになります。これを上記のヘッドラインではloopholeと表しているわけです。まさに濡れ手に粟、Easy moneyです。

 

一方、MBSの投資家からすれば、額面以上で取引されている資産が割引価格(額面)で売却されることに等しいわけですから損失を被ります。

 

議会が失業給付金や業界支援でもめており、「財政の崖」のリスクが高まる中、思わぬところで市場リスクが噴出しているらしいのです。政治リスクってやっぱり怖い!11月の大統領選後はやっぱり恐怖。

 

(以下試訳)銀行は市場価格を下回る価格で住宅ローンを購入する抜け穴を発見

 

 

20201011日)

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