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第6回 SASB-持続可能性会計基準審議会
本日は用語というわけではありませんが、これから重要性が増すと思われるSASB(Sustainability Accounting Standard Board/持続可能性会計基準審議会)を取り上げます。
SASB……何となくFASBとかIASBとかの親戚かと思ったあなた! 正解です。
この団体のポイントは、会計基準などと同じ「財務的」視点からESGなどのSustainabilityを捉えようとしているところです。
ESGやSustainabilityに対する注目が高まるなかで、さまざまな団体や基準がESGやSustainabilityの開示項目を規定したスコアリングなどを試みてきました。
しかしながら、もともと「定性的」なESGや持続可能性といったものを「定量的」にスコアリングするためには、企業から膨大な情報を得なければならず、企業側の負担もだんだん高まってきました。さらに、いまでは「サステナビリティ」のスコアリングや評価を行う団体が乱立してきており、「いったいどれに回答すればよいのか?」「どれが最もAuthoritativeなのか?」と、情報を出す企業側も、それを利用する投資家やアセットオーナーもやや疲弊し始めています。また、団体によって基準が異なるため、同じ会社でも、評価する団体によってスコアが異なるといった難点も生じてきました。
そこで、「財務的情報」の開示に対する基準を出していたFASB(米国会計基準審議会)やIASB(国際会計基準審議会)と同じような目線で、「非財務情報」の開示基準を提示できないか、と考えて作られた非営利団体がSASBです。
SASBのポイントは、何でもかんでもESGやサステナビリティに関連するものに対してスコアリングや質問を試みるのではなく、Financial Materiality(財務的マテリアリティ)に注力して、情報を提供する企業と、それを利用する投資家の双方に最も関係性が深いと思われることに注力を置いている点です。
元々財務諸表の目的が、投資家に対する財務情報の適切な開示に力点を置いていたことを踏まえると、このアプローチは投資家に的を絞ってESG情報を提供するという面で理にかなっていると言えます。
そのような流れの中で、大手投資家のブラックロックのラリー・フィンクCEOが、2020年1月14日付け投資家向け「フィンク・レター」で、SASBガイドラインに沿った情報開示を企業に促すと述べています。
また大手インデックスファンドのSSGAもSASB開示基準で開示される情報や数値を投資に活用すると表明しました。
会計の世界でもIFRSに収れん(コンバージェンス)が進んでいるように、今後ESG指標についてもSASBへのコンバージェンスが進む可能性があります。個々の開示企業については統合報告書などをSASBに準拠したものに移行するようになったり、投資家については、これまでの個別ESG指標ではなくSASBベースでの開示を求めるケースが増えるかもしれません。いずれにせよ、2020年11月には米国大統領選が控えていることもあり、次年度以降の開示の在り方やトレンドが変わる可能性があるかもしれないとみています。
これからはSASBに準拠した統合報告書やベンチマークなどに関連する翻訳が増えるかもしれないですね。
https://www.mof.go.jp/pri/research/seminar/fy2019/lm20191220.pdf
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61735290Q0A720C2000000/
https://home.kpmg/jp/ja/home/insights/2018/06/integrated-reporting-20180606.html
(2020年9月18日)